第百三十二話
黄金連休休めるのだろうか・・・1日くらいは休みたいです。
今日、9月4日は土曜日で学校は休み、それでも変わらず里奈の作った朝ご飯を食べる我が家のいつもの朝の光景、うん、今日も玉子焼きが美味しい
『 それで里奈、お前の行きたい所ってどこだよ? できればあまりお金の掛からないトコで頼むな。』
あまりお金に余裕のない我が家の生活だ、今は亡き父方の祖父母からの仕送りだけなんだから仕方ないのだが、元々勉強の出来ない俺はこんな背景も手伝い大学に行く気もなく高校を卒業したら働く予定だ、俺はいいがせめて里奈はきっちり大学に行かせたいしな
『 少し遠いけど○○農園で今日からリンゴ狩りがオープンするんだよ、お兄ちゃんリンゴ好きでしょ、だから里奈、お兄ちゃんと一緒に行きたいな♪ 』
笑顔でそう言う里奈を見て妹なのにドキリとさせられてしまう、こんな事ではいけないのだがな・・・
『 そっか、じゃあリンゴ狩りに行くか、しかし今から行って参加できるのか? 俺はよく知らないがこーゆーのは予約とかしないと入れないんじゃないか。』
今日オープンなら尚更そうだと思うが里奈は得意げな笑みを浮かべ言った
『 ふっふーーんだ、お兄ちゃん、里奈にぬかりはないんだよっ! ちゃんと3日前に予約してるんだから、3日間ずっと楽しみにしてたんだからね! 』
それは段取りのよい事で、俺にも今まで言わないでいたのはリンゴが好きな俺を喜ばせたかった里奈なりのサプライズなんだろうな
『 よしっ! じゃあご飯食べ終えたら着替えて行くか、なるべく動きやすい服装にしとけよ、まかり間違ってもミニスカートとか穿いてくんじゃねーぞ。』
『 はーーい、お兄ちゃん、2人でお腹いっぱいなるまで食べようね♪ 』
だからそんな天使みたいな笑顔を俺に向けないでくれ・・・しかしその笑顔を独り占めしたいと思ってる自分がいるのも否定できない・・・俺は駄目な兄だな。
電車に乗って行く為、俺と里奈は駅に向けて歩いてた、俺も里奈も服装は動きやすいズボン姿だ、里奈のズボン姿はなかなか新鮮だった、普段はスカートの多い子だからな
『 ねえお兄ちゃん、一つお願いしたい事があるんだけど聞いてくれる? 』
隣を歩く里奈が急にそんな事を言い出す、てっきり手をつなぎたいとかそーゆーのかと思ったのだが
『 なんだよ? なんか変な事じゃなかったら大抵は聞いてやるぞ。』
『 うん、里奈ね、今日だけは本当に恋人同士としてデートしたいの・・・だからお兄ちゃんの事を貴ちゃんって呼んでいい? 』
案外それもいいかもな、お兄ちゃんと呼ばれ家みたいにベタベタされては周りから変な誤解をされるしな
『 いいぞ、でも今日だけだからな、だから今日はお前は俺の彼女だ。』
『 やったーーーっ!! じゃあ貴ちゃん、手をつなごーよ、恋人なんだから当たり前だよね♪ 』
なんか罠にハマった気がしないでもないが兄妹と思われなければ安全だろ、俺は右手を里奈に差し出した
『 へへへーー、どしたの貴ちゃん、顔が赤いよ。』
里奈はニヤニヤしながら俺と手をつないだ、周りから見たら俺達ってただのバカップルだな、兄妹とは思われてないはずだ、後は知り合いに会わない事を祈るだけだった・・・。
――――
『 ふーーー、満腹満腹♪ いっぱい食べちゃったね貴ちゃん、でも本当に美味しかったもんね。』
農園はオープン初日も手伝ってかなり人が多かった、里奈が予約してなかったら恐らく入れなかっただろう、その後はデパートで秋服を見たりダーツを楽しんだりそれなりにデートっぽい時間を過ごした
『 やっぱ農園で取れたてのリンゴは旨いよな、スーパーとかで買うリンゴとは一味違ってたよ。』
『 貴ちゃんが楽しんでくれてよかったー、里奈ね、一回でもいいからこんなトコ来てみたかったんだっ! これからもたまにでいいから一緒に行こうね。』
里奈は少し寂しそうだった、今日のリンゴ狩りは圧倒的に家族連れが多く一様に皆楽しんでた、それに比べ里奈は親にどこか遊びに連れてってもらったという思い出が1つもなかったからな、まあ俺もなんだが
『 ああ、今度はイチゴ狩りでも行くか、みかん狩りでも悪くないけどな。』
『 うんっ! 絶対行こうね♪ 今日はありがとうお兄ちゃん、里奈もすっごく楽しかったよ♪ これから2人で思い出いっぱい作ろうね、里奈、お兄ちゃんの妹で本当に良かったよ。』
・・・やばい、里奈の前で泣き出しそうだ、母は不倫相手と家を出て行き父からは暴力を受け親との思い出が何1つない里奈、それでも非行に走らず素直な優しい子に育った、そして俺への今のセリフ・・・神様、お願いを1つ追加していいですか? 里奈を誰よりも幸せにしてあげてください! 俺はそう願わずにいられなかった・・・。
次話は里奈達4人のお弁当話になる予定です。