表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な人達  作者: 曹叡
130/210

第百二十八話

やっと工藤編が終わります、やっと暗く重い話も終わりだ・・・。

 『 蒼太ぁ〜、すっごく心配したんだからぁ〜、あぁぁ〜ん・・・。』


病院では紗恵ちゃんが蒼太に抱きつき泣きじゃくっていた、彩花も


『 本当に・・・心配ばっかりかけて・・・でもよかった、もし蒼太や貴志や真司にもしもの事があったら私、あいつを一生恨むトコだったんだから・・・。』


今にも泣きそうだが心底安心した表情をしてた、病院には他にも奈津美さんや里奈、夕奈ちゃん、いずみちゃんも来ていた、皆蒼太が撃たれたと聞いて心配で駆けつけてくれたのだ


『 紗恵も姉さんも大げさなんだってば、肩をかすっただけなんだからさ、でも・・・心配してくれてありがとね、皆さんもわざわざ来てくれて本当にありがとうございます。』


蒼太は来てくれた奈津美さん達に行儀よく頭を下げる、その姿にいずみちゃんが


『 友達を心配するのは当たり前だよ、真兄の友達は私の友達でもあるんだから! そんな他人行儀っぽく言ってほしくないよ。』


少し不服そうに言うがそれでも笑顔でたしなめる、それにしても蒼太のケガがたいした事がなく本当によかった、医者も入院の必要はないと言ってたのでまず大丈夫だろう、里奈も


『 でも本当に大事にならなくてよかったよ、蒼太くんはお兄ちゃんや里奈達の大切な友達なんだからぜーーったいにいなくなったりしたらダメなんだよ!! 』


『 ・・・そうよ、蒼太くんには・・・私とお兄さんの結婚式に・・・ぜひ来てもらいたいから・・・。』


夕奈ちゃんの発言はとりあえずスルーして皆それぞれ周りの人達と話し始める、その中で理子が浮いてるのは仕方ないか・・・


『 青山さん・・・少し2人でお話がしたいんですけど・・・いいですか? 』


皆が話に没頭してる最中、綾子さんがコソッと俺に言ってくる、その様子に何か引っかかるモノを感じたので皆に黙って綾子さんと2人で待合室から出た。


建物の外に出て少し歩くと喫煙所らしきベンチがあった、幸い誰も居なかったので俺と綾子さんはここで話をする事にした


『 ここでいいだろ? それで話って何かな。』


『 はい、今から話す事は青山さんの胸の内だけにしまっておいてほしい話なんですけど・・・あなたにはどうしても聞いてもらいたいので・・・。』


綾子さんはずいぶん思いつめてる様子だ、しかしあんまり人に広めたくない話を何故俺にするんだ?


『 恭介先輩の事なんですけど・・・。』


工藤の事? それが俺と何の関係があるんだろうか、俺の疑問を無視して綾子さんは話し出した・・・。




・・・かなりヘビーな話だったな、工藤のあの金持ち両親は実の両親ではなく工藤の叔父夫婦で工藤の実の父親は妻 ( つまり工藤の実母 ) とその浮気相手に保険金目当てで殺されたとか、そんなのワイドショーの中だけの話かと思ってたが・・・


『 どうして綾子さんがそんな事を知ってるんだい、あとその話を俺にする理由は? その話が俺と何の関係があるんだよ。』


俺はずっとその疑問を抱いてた、正直聞きたくない内容だったのに・・・


『 私の父さんは警察署で働いててその事件を担当してたんです、事件の事は中学の時に父さんから聞かされました、父さんは恭介先輩とは縁を切れと言ったんですけどその事件と恭介先輩は関係ないと私は思ったんです、あの時の恭介先輩は誰にでも自然体で皆が嫌がる事を自ら率先してやる人でしたから・・・』


意外だな、工藤にそんな一面があったとは、じゃあなんであんな奴になったんだ


『 綾子さんがその事情を知ってる訳はわかったよ、それでその事件が俺と何の関係があるの? 』


『 凄く良く似てるんです・・・、青山さんと・・・その共犯の浮気相手の人が・・・だから恭介先輩・・・青山さんに対してあんなに敵意をむき出しにしたんだと思います。』


そうだったのか、確かに工藤については去年の体育でのサッカーの試合でコテンパンにしただけであんなに恨まれるのは変だと思ってたが・・・、自分の人生と母親を狂わせた男と俺が似てたから工藤は特に俺を目の敵にしてたんだな、正直逆恨みだと思うが工藤からしたら俺を苦しめる事で父親のかたきを取ろうとしたのだろうか・・・


『 確かに恭介先輩のした事は許せる事じゃありません、でもあの時青山さんが言ってたように生き方を間違えなかったら・・・分かり合える友達が恭介先輩にいたら・・・きっとあんなにはならなかったと思うんです、小さい頃、内気で友達ができなかった私の最初の友達になってくれたのが恭介先輩だったんです。』


『 ちょっと待ってよ、じゃあ工藤が狂ったのは何らかでその事件を知ったからって事なの!? 』


まあ無理もないか、自分の父親を死に追いやったのが自分の母親とその浮気相手とか・・・高校生には受け入れがたい現実だよな


『 はい・・・多分2、3ヵ月前だと思います、その頃に例のお好み焼き屋のバイトを頼まれたんです、なんだか雰囲気も変わってましたし・・・。』


それでクスリに手を出しその購入資金を得る為に綾子さんを利用して罪もない女性を集団で襲うとか・・・いくら過酷な現実を知ったとはいえやはり工藤のした行為は最低だと思う、世の中には工藤と同じ境遇の人は何人もいる、それでもその人達は一生懸命生きてるんだ、工藤だけがそんな事をしていい訳がない


『 綾子さん、過去はどうあれやっぱり工藤は反省すべきなんだよ、だって許されない事をしたんだから、俺としてはもう綾子さんは工藤には関わってほしくないけどそれでも綾子さんが工藤を救いたいと思うなら・・・俺はもう何も言えないよ、どうするかは綾子さん自身が決めなきゃ。』


『 私は・・・恭介先輩を救いたい! 罪をちゃんと償って1からやり直す恭介先輩を・・・私が支えてあげたいです。』


これだけ堂々と言われてはもう俺の出る幕はない、俺は最後に綾子さんに


『 そっか・・・、綾子さんがそう決めたのなら俺はもう何も言わない、工藤を救えるのは多分、綾子さんだけだろうからさ、困難な道かもしれないけど頑張ってね、また何かあったらいつでも言いなよ。』


『 はい、ありがとうございます、やっぱり青山さんに話してよかったです、それじゃ私はこれで失礼します、いつかまたお好み焼き屋にも来てくださいね。』


『 ああ、また皆で行くよ、綾子さんも元気でな。』


そして綾子さんは病院から去っていった、こうなったら工藤が分かってくれる事を願うしかない、綾子さんの一途な想いを・・・。


ちなみに後日談だが工藤は学校を自主退学したという扱いになり仲間だったあの不良連中は全員、工藤の自供で捕まったらしい、綾子さんも鑑別所にいる工藤に何度か手紙を書いてるそうだ、まれに工藤から返事の手紙もくるとの事、いつかくるだろう、綾子さんの努力が実を結ぶ時が・・・。

次話は理子との結末でも書こうかな・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ