第百二十一話
貴志視点に戻ります。
蒼太からの電話を受けた俺と友成は学校に近い所にあるファミレスに向かってた、店に着くとその店の中では蒼太と綾子さん、それとなんだか人相が悪くなった工藤が何やら話をしている、蒼太が言うには工藤と綾子さんだけで話をさせた方が上手くいくかもしれないとの事なので俺と友成は店の外から工藤達にバレない様に様子をうかがってる、蒼太にはメールで肯定的な事を言ったが正直な所、俺は厳しいと思う、工藤のあの性格じゃあそう簡単に改心なんてしないだろう
『 なあアオ、工藤と綾子さんの話し合い、上手くいくと思うか? 俺は無理だと思うぞ、早めに乗り込んで工藤をシメた方が手っ取り早いと思うがな。』
友成は早々に説得とか無理だと思ってたみたいだ、しかしいきなり俺達が乗り込んでも余計に工藤の機嫌を悪くするだけだ、説得が無理ならせめて綾子さんの安全だけは確保しなきゃな
『 まあ待てよトモ、蒼太が居るんだし綾子さんは大丈夫だろ、俺達の出番は工藤が何か行動を起こしてからの方がいーぞ。』
友成を抑えてより注意深く綾子さん達の様子を見てると俺のケータイに電話がかかってきた、奈津美さんからだ、電話に出ると彼女は涙ぐんだ声で話す
『 貴志くん、すみません! 私達が目を離してたら前田さんがいつの間にか居なくなってしまったんです! クラスの人に聞いてみたら前田さん、昼休みに誰かと電話をした後に慌てて教室から出て行ったそうです、私の不注意でこんな事に・・・本当にすみませんでしたっ! 』
なんてこった! 理子の奴、こんな時に一体どこに行ったんだ!? しかし理子も奈津美さん達に黙って行くなよ、まあ大方工藤が何か適当な嘘でもついて理子を誘い出したのだろうけど、でも理子がここに居ないって事はどこか別の場所に呼び出したのか?
『 奈津美さんのせいじゃない、彩花だってそうさ、2人が気にする事は何もないんだから、今更だけどこんな事に巻き込んでしまって本当に悪かったよ。』
『 貴志くん・・・。』
『 ゴメンね貴志、私、少しでも貴志の役に立ちたかったのに・・・ 』
ケータイから彩花の声も聞こえる、彩花とは思えない元気のない声が
『 何言ってんだ彩花! 元々は無関係な彩花達まで巻き込んだ俺が悪いんだから気にすんな、俺の役に立ちたかったって言ってるけどお前が俺の側に居るだけで俺は毎日が楽しいぞ、俺はお前から笑顔とか楽しい時間とかをもらってるんだ、ありがとな、彩花。』
少し過剰な言い方だけどこれ以上彩花のあんな元気のない声を俺は聞きたくない
『 ・・・ありがと貴志、真司と一緒に前田を助けてあげてね、私も奈津美も2人を信じてるから。』
少しは元気になったかな? やっぱり彩花は元気な笑顔が一番だからな、電話を切った俺は友成に理子が学校から居なくなった事を話した、話を聞いた友成は怒りを表すかと思ったが意外と落ち着いてた
『 そうか、前田がな・・・でも工藤がここに居るって事は前田は多分違う場所にでも呼ばれたんだろうな、綾子さんもここに居るんだし工藤が連れてくつもりなんだろ、とにかく工藤と話をしなきゃ何も分からないからな、警察に言うのはその後だ! 』
『 トモって結構冷静なんだな、さすが刑事を目指してるだけあるよ。』
素直に感心した、案外友成は刑事に向いてるのかな?
『 桜田刑事じゃないんだから、香取刑事ならこんなの当然だっつの、それより行こうぜ、早くしなきゃ前田が危ないからな。』
そんな友成のたわ言を聞き流し俺と友成は綾子さん達の居る店の中に入るやわき目もふらず綾子さん達の席に直行する、そして工藤に直球な一言を言った
『 工藤っ!! お前、理子をどうしたんだ!? 』
俺を見た工藤は邪悪な笑みを浮かべた、蒼太も綾子さんも何事だといった感じだ
『 やっぱり来たね青山君、君達には関係ないよ、これから始まる楽しいショーの邪魔をしないでくれるかな、さあて、じゃあ綾子、そろそろ行くぞ。』
『 行かせるわけないだろうがバカタレ! お前が今から行くのは警察だ、それと前田がどこに居るのか話せ、今更隠しても無駄なのは分かってるだろ。』
友成は綾子さんを庇う様に工藤に宣告する、だが工藤は全く動じない、何を考えてるんだかさっぱり分からないなコイツは
『 君達自分の立場が分かってるのか、僕が仲間に電話を一本するだけで理子は十数人の男達からいろんなコトをされるんだぞ、だいたい理子がどこに居るか知らないんだろ、こっちが主導権を握ってるだからな、ククク・・・。』
『 工藤先輩っ!! まだそんな事言ってるんですか! 綾子さんの為にもこんな事止めてください!! 』
蒼太も工藤に詰め寄り綾子さんの為にと強調する、綾子さんは悲嘆に満ちた表情で工藤を見ていた
『 だったら今から皆で理子の居る所に行くかい? 君達3人に綺麗事だけではどうにもならない現実を教えてあげるよ。』
きっと俺も友成も蒼太も凄い顔してたんだろうな、綾子さんも俺達の変化に戸惑ってる、上等じゃねーか! 人の気持ちも考えない外道野郎に現実を教えてやるのは俺達だ・・・。