手のひらの星
トムとアリスの間に生まれた子は、左の手のひらに小さな星がありました。
それは、小さいながらに本当の星なのです。暗いところでも明るいところでも、その星はきらきらと輝いていました。マギーと名づけられたその女の子は、星をじっとながめたり、星につられて近寄ってくる小鳥たちと遊んで赤ちゃん時代を過ごしました。
「星とともに育ったこの子は、一体どんな人間になるのだろうね」
トムとアリスは、そう言ってマギーを慈しみます。トムは、星にまつわるお話をいくつも作って、マギーに聞かせてやりました。アリスは、星模様の服をこしらえて、マギーに着せました。夫婦の間にたった一人授かったこの娘は、トムとアリスにとって何より大切で、特別でした。たとえ手のひらに星がなくとも、マギーは彼らの一番星であったでしょう。
マギーがすくすく育って七歳になった年の冬のある日、家族で少し離れた村の、おばあちゃんの家に出かけました。おばあちゃんは年を取ってあまり出歩くことはなかったけれど、面白い話をいくつも知っています。とりわけマギーは、星の話を聞くのが大好きです。
「星は、お空に光っているばかりではないのだよ。時には、雨や雪のように、さあさあと降ってくることもあるのさ。若い頃に見た星の土砂降りは、それはそれはきれいだったよ」
うっとりと語るおばあちゃんを見て、マギーは目を丸くします。
「でもおばあちゃん、星が雨のように降ったら、いつかお空には星がなくなっちゃうわ」
マギーは知っていました。雨が降ったら、それまで空を覆っていた雲がとけてなくなり、一面の青空になることを。星空にも、同じ事が起こるのではないかと不安になったのです。
あっはっは、とおばあちゃんは笑いました。
「大丈夫、星は、何万もあるんだもの。なくなりはしないよ」
それでも、マギーは不安なままでした。
夜になって、そろそろ帰ろうとトムが言いました。おばあちゃんにお別れのキスをして、冬の夜道を三人で歩きます。馬車が停まっている場所まで、少し距離があるのです。
見上げると、たくさんの星がきらきら輝いていました。マギーは左手の手袋をとって、手のひらの星を空にかざしてみました。
その時です。一つの星が、すっと流れて消えました。
「星が!」
マギーは驚きました。そばを歩くトムとアリスも流れ星を見ていて、のんびりと言うのです。
「きれいだね」
さあ、マギーはいよいよ不安になりました。おばあちゃんの言っていたことは本当だったのです。空にある星がみな流れてしまったら、夜はきっといつも真っ暗で、恐ろしいものになるでしょう。
マギーは歩きながら考え、考えながら歩き、いいことを思いつきました。
手のひらの星を、ころんと取り出したのです。小さなダイヤモンドのように固い星は、手のひらの上できらめきをあちらこちらへと放ちました。
その星を、マギーは地面に埋めました。見上げると、まだ背丈の低いレモンの木が生えています。星を取り出す時には、この木を目印にして地面を掘ればいいでしょう。
星がみんななくなってしまったら、きっと掘り出しにこよう。その時は、トムもアリスも、村のみんなも大喜びするだろう__そんなことを想像しながら、マギーは少し先を歩く両親の元へ、駆けだしていったのでした。




