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第8話

こんにちは。お元気ですか。


ウィスタリア聖教国第三騎士団団長のクラレットです。


ぼくはいま、とても悩んでいます。


何について悩んでいるかと言うと、ウィスタリア聖教国第一騎士団副団長のラベンダーが伝説の勇者として認定されたと言うのです。


そしてその噂がまたたくまにウィスタリア聖教国の国都内に広がりました。


第一騎士団はもともと貴族の子弟が中心であったため悪い評判はなく、副団長のラベンダーはさらに貴族以外に平民たちにも人気がありました。


なので勇者認定についても非常に歓迎されている。


それはまあ、いいのですが・・・・


ぼくはこのうわさを宿舎内できいたとき、思わずため息が出てしまいました。


「はあ、またホワイトとラベンダーが一緒にいられる時間が少なくなった」


その悩みをきいたぼくの隣にひかえている従者のホーネントが久しぶりに口を開いた。


「申し訳ありません。その伝説の勇者の件については、わたくしどもの知り合いである託宣の巫女による「託宣」が原因だと思います」


「私のほうにもその「託宣」の内容が入ってきているのでもう少し詳しい情報をお伝えしましょうか?」


とホーネントはぼくに聞いてくる。


「実は伝説の勇者は一人ではないようです。どうやら空の勇者と、大地の勇者の2人いるということらしくこのたびは空の勇者が認定されました」


ぼくはそれを聞いてびっくりする。


この情報はウィスタリア聖教国の上層部でも把握していないだろう。


「とりあえずラベンダーはその空の勇者としてゴールド王国に呼ばれたということだね」


ぼくがそう確認すると、


「そういう認識で間違いないと思います。そして大地の勇者はどうやらあの、フクシア神教国内から出たようです。フクシア神教国にあるウェッジの村の出身だとか」


ぼくはその内容にさらに驚きを隠せなかった。


「フクシア神教国!?あの、フクシア神教国かい?たしかあの国は・・・・・・」


「はい、聖教会とは昔から反目しあっている国ですね。ですので大地の勇者が聖教会のあるゴールド王国に呼ばれるということは無いかと」


「だよね」


ウェッジの村があるというフクシア神教国はむかしから聖教会とは仲が悪かった。


フクシア神教国が創造神様に対して信仰心が薄いかと言うとそういうわけではない。


むしろ信仰心は厚いほうだろう。


しかし聖教会という組織とは折り合いが悪いのだ。


そしてよりによってそのフクシア神教国からも伝説の勇者の一人が現れた。


つまり、伝説の勇者様が数千年ぶりに2人も現れたが、1人はゴールド王国と聖教会側の国で、もう1人はゴールド王国と聖教会側に対立する国の出身であるということだ。


空の勇者と大地の勇者は出身国同士が反目しあっているので、勇者たちも反目しあうか、少なくとも協力体制はとれないだろう。


ぼくはラベンダーがこれ以上変なことに巻き込まれてホワイトとの時間が確保できないなんてことにならないよう祈るばかりであった。


従者のホーネントはぼくの心の祈りが聞こえているのか、


「それは難しいでしょうね」


とつぶやく。


その後、ぼくにもラベンダーの護衛として第三騎士団と一緒にゴールド王国へついてゆくよう命令が下った。


これで、ゴールド王国へはぼくと、第三騎士団、そしてラベンダーが行くことになった。


それは同時に、しばらくの間ウィスタリア聖教国およびその国都からそれだけの戦力が抜けるということを意味する。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


第二騎士団の拠点にて。


僕はいま、第二騎士団の宿舎内にある食堂にいる。


そこで今回のうわさをきいた。


ラベンダーが伝説の勇者であるといううわさのことだ。


「また差をつけられたな・・・・」


僕は誰にも聞かれないようにつぶやいた。


いつになったら彼女にふさわしい力をつけられるんだろう。


いつになったら、彼女の隣に立つにふさわしい地位を得られるんだろう。


僕にとっての目標、夢はそれだ。


ずっとラベンダーを守りたいと思ってた。


好きな女の子を守りたいという男の子らしい夢を持っても悪くないだろ。


でも現実は甘くない。


圧倒的にラベンダーのほうが強いのだ。


もうくやしいという気さえも起きない。


やっぱりクラレットのほうがお似合いだよなあ。


いつも楽しそうだし。よく一緒にいるし。副団長と団長だし。


地位も実力もお似合いだ。


普段は気にしないようにしているが、こうやって時間ができて考えごとをするとといつもこのようなことを考えてしまう。


そうしてると、不意に隣から声をかけられた。


声をかけてきたのは僕にいつも嫌味な事を言ういやな先輩だった。


「おい、そこの底辺騎士。うわさは聞いているか。ラベンダー副団長がこのたび伝説の勇者様に認定されたらしいぞ」


「ふふん。すこし仲がいいからって調子に乗るからだ。これで身の程を知っただろう。おまえのような底辺の者があのラベンダー副団長とおなじ空間にいるだけでも汚らわしいわ!!」


と罵詈雑言の嵐だ。


どうもこの先輩はラベンダーのことが好きなようだ。


だからいつも仲良く話をする僕がうらやましくて仕方ないらしい。


だけど同じ空間にいるだけでも汚らわしいってそんな無茶言われてもなあ。


男の嫉妬は醜い。


僕はほどほどにその先輩の愚痴を聞き、先輩が飽きてどこかへ行くまで我慢するのがいつもの常だった。


今回も先輩が飽きるのを待っていたが、今回は先輩の表情が今までに見たことがないほど歪んでいたのだ。


そう、僕への殺意を感じるほどに。



数日後。


僕は、クラレットと第三騎士団、そしてラベンダーがウィスタリア聖教国から旅立ったことを聞いた。


後のことは第一騎士団を中心に、第二騎士団と協同してウィスタリア聖教国を防衛していく手はずだ。


しかし、度重なる魔物討伐のおかげで周辺はかなり魔物がへっているらしい。


そのこともあって今回、クラレットとラベンダーがゴールド王国へ出張する許可がおりたのだろう。


僕はというと、雲の上の2人がどこへ行こうとやることは変わらない。


相変わらず訓練、そして時間があれば休憩をとりながらぼんやりしている日々だった。


1週間がたち、ウィスタリア聖教国を出た一行がゴールド王国へそろそろ着こうかというタイミングで事件は起きた。


いや、事件ではなく災害と言いなおしてもいい。


魔物の大発生がおきたのだ。


魔物の大群が大発生し、ウィスタリア聖教国の国都を目指していたのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


伝令兵がウィスタリア聖教国国都の中心にある宮殿に駆けつける。


「伝令!!魔物の大群が国都を目指し進軍中。数はとても数え切れなく、少なくとも1万はこえます!!」


伝令兵は息を切らしながら必死の形相で宮殿内の神官と国の最高指導者である大神官に報告した。


「1万・・・・・・」


みなはその数に絶句した。


「ばかな!そんな数の魔物など聞いたこともない。伝令は見間違いか何かの勘違いでは??」


しかし、伝令兵は怒りを含んだ声で、


「何を馬鹿なことを言っているんですか!!すでに第二騎士団が防衛拠点で防衛の準備にはいっており、実際に魔物戦っているんですよ!!」


第二騎士団の拠点は国都の外にあり、魔物や人族の敵がきたらすぐに防衛ができるようになっている。


伝令が来ると同時に防衛体制をととのえていたのだ。


「魔物は北と南の2つの方角から進軍しております。どちらも第二騎士団が防衛拠点を築いていますが、どちらをどの騎士団が担当するかを決めるべきだと思います」


伝令兵が戦略の方針を決めるように促す。神官たちは、


「うむ。そのとおりだ。すぐに第一騎士団団長のサンドベージュを呼べ。これから作戦会議にはいるぞ」


と、速やかに魔物から国都をまもるための作戦を考える準備を整え始めた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


しばらくして。


限られた時間で、作戦会議を終了させた第一騎士団団長のサンドベージュ。


そのサンドベージュ主導のもと、作戦は決まった。


作戦は北を第一騎士団、南を第二騎士団が受け持つとして防衛をかため魔物の攻撃を防ぎつつゴールド王国へ救援を要請するというものだ。


この作戦を聞いた第二騎士団団長ヘリオトロープはまっとうな戦略に胸をなでおろした。


「ふう。よかった。当然と言えば当然だが、日ごろからの我が騎士団への不当な扱いから魔物のむれに突撃しろとでも言われるかと思った」


ヘリオトロープがこんなことを考えてしまうぐらい日ごろから、ウィスタリア聖教国の上層部の第二騎士団への扱いはひどいものだったのである。


しかし、サンドベージュはそんなことを考えていない。


とくにこの国が亡びるかもしれないほどの魔物の襲撃をまえにしてそんなおかしなことをして士気をおとす必要はない。


適切な作戦と適切な補給、そして適切な指揮を行ってこの国難を乗り切るつもりであった。


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