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本編外3    教皇のその後 ――創造神による裁定――

教皇は、魔王が討たれたという報告を聞いたとき、声を上げて笑った。


中央平原に平和が戻る?


魔族の脅威が去る?


そんなことは、どうでもよかった。


彼の胸にあったのは、ただ一つ――


自分が勝った、という満足感だけだった。


魔王カーマインは死んだ。


魔族は瓦解し、もはや大規模な反抗はできない。


聖教会に逆らおうとした愚か者は、すべて排除された。


「これでよい」


教皇は、玉座に深く腰掛け、ゆっくりと息を吐いた。


創造神など、存在しない。


あれはただの作り物だ。


人々をあやつり、導くために用意された、都合のよい幻想。


人々が本当に崇めているのは、教皇である自分だ。


ならば――神は自分でよい。


その考えに至ったとき、最後の一線を超えた。


その瞬間だった。


玉座の前の空間が、音もなく歪んだ。


光が差すわけでも、雷が落ちるわけでもない。


ただ、そこに――いた。


簡素なメイド服をまとった、一人の女性。


この世のものとは思えぬほどの美貌。


プラチナブロンドの長い髪。


そして、大陸全体を覆い尽くすかのような、圧倒的な魔力。


教皇は一瞥し、眉を顰める。


「何者だ」


女は答えなかった。


代わりに、静かに告げた。


「創造神に生み出された、龍族の長よ」


その言葉に、教皇の眉がわずかに動く。


「私は、あなたに使命を与えた」


女の声には、怒りも憎しみもなかった。


ただ、深い悲しみだけがあった。


「世界を見守り、導き、均衡を保つという使命を」


「しかし、あなたはそれを忘れた」


「我欲を優先し、多くの命を踏みにじった」


教皇は、肩を震わせて笑った。


「戯言を」


「神など、おらぬ」


「いるとすれば――この私だ」


右手に、膨大な魔力が集まる。


龍族の長たる世界最強クラスの力が膨れ上がり、眩い閃光となった。


「消えろ、幻影」


教皇は、その光を女へ放った。


だが――


「愚かな子」


挿絵(By みてみん)


女は、ただ右手を前に出した。


それだけだった。


パチン


乾いた音が、一つ。


次の瞬間、教皇は――


魔力ごと、存在ごと、塵となって消えた。


肉体も、魂も、例外なく。


完全な死。


創造神エクレアーナが、裁きを下した瞬間だった。


そこに、もう教皇はいない。


エクレアは、しばらくその場に立ち尽くしていた。


彼は、かつて――


自分が最初に創った龍族の一人だった。


自ら教育し、名を与え、使命を授けた存在。


それでも、長い年月の中で、歪み、狂い、世界を壊した。


「ごめんなさい」


誰にともなく、エクレアは呟いた。


そして、ほんの一粒、涙を落とす。


その涙は、床に触れる前に消えた。


裁きは終わった。


世界は、静かに――


次へ進む。



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