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本編外1   勇者たちのその後 ――名を残した者、名を捨てた者――

■ 空の勇者 ラベンダー


魔王討伐の報は、中央平原を瞬く間に駆け巡った。


勇者ラベンダーは英雄として迎えられ、讃えられ、崇められた。


だが――


彼女自身は、その歓声を一切、喜ばなかった。


魔王カーマインが最後に見せた、幼子のような表情。


語られた真実。


聖教会と教皇の欺瞞。


それらは、勇者という肩書を、深く蝕んでいた。


戦後処理の場で、戦死者の名簿が読み上げられたとき。


ラベンダーは、その中に――


最も見たくなかった名前を見つけてしまう。


ホワイト。


その瞬間、世界から音が消えた。


涙は止まらず、声も出なかった。


誰にも告げることなく、彼女はその場を去り――


数日後、ゴールド王国から姿を消した。


以後、彼女が表舞台に立つことはなかった。


報酬も、称号も、栄誉も、すべて拒み、辺境の地で人知れず暮らしたという。


胸元には、いつも一つのペンダントがあった。


それが何を意味するのか、彼女は誰にも語らなかった。


やがて――


ラベンダーは、新しい命を宿していることに気づく。


それを知った夜、彼女は初めて声を上げて泣き、そして、創造神に感謝した。


その子は、父の名を知らずに育った。


だが、確かに――


母の愛と父の志を受け継いだ。


ラベンダーは、最後まで勇者であり続けた。


愛する人との子を育てるという最も勇気ある行為によって。


■ 英太子 クラレット


クラレットは、魔王討伐後も、冷静に戦後処理を指揮した。


復興。


兵站。


政治的調整。


どれも完璧だった。


だが、彼の中では――


すでに一つの役割が、終わっていた。


戦死者名簿に記された、幼なじみの名。


それが、決定打だった。


さらに、自身が女性であるという事実を完全に受け入れた今、「王太子」という仮面を被り続ける理由はなかった。


クラレットは、王太子の地位を辞し、表舞台から姿を消した。


混乱は起きなかった。


すでに政務の多くは、宰相ホーネントが担っていたからだ。


人々は言った。

「英太子は、役目を終えたのだ」と。


クラレット自身は、最後まで語らなかった。


誰を愛していたのか。


何を失ったのか。


ただ一度だけ、別れ際にこう言ったという。


「愛した人を、ちゃんと愛せた。それだけで・・・・」


その表情は、穏やかだったという。


■ 大地の勇者 パウダー(補記)


パウダーは、すでにこの世にいなかった。


だが、その名は、確かに歴史に刻まれた。


そして後に――


彼が「ご主人様候補」の一人であったことを知る者は、誰もいない。


それでよかったのだ。


彼は、彼自身の人生を生き切ったのだから。



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