第3部 おまけ1 精強六武威と魔王の歴史
ラベンダー一行が、魔王のいる地域まで旅をしていたときのこと。
この旅の同行者は、弓騎士のミモザ、盾担当のサンドベージュ、そしてキース・マリーゴールド。最後に聖女ケイトの計4人だ。
旅の乗り物は一般的に馬車と馬が多い。
馬に乗れるものは馬に乗る。
なぜなら馬車は少し乗り心地が良くないからだ。
だけど、長く旅をつづけて退屈になってきたのであろうか。
魔法担当でもあり、好奇心が旺盛なキース・マリーゴールドが誰にともなく質問をした。
「なあなあなあ、誰でもいいからさあ、魔王についてわかっているってことがあったらおしえてくれよ。だれもおしえてくれないんだぜ」
その言葉に、勇者ラベンダーは
「私も知らないわ。でも魔王の情報が欲しいと言うと女王陛下からはミモザさんに聞きなさいって言われたんだけど」
とミモザのほうをさりげなく見て言った。その視線にミモザは、
「ふむ。私がこの中で一番魔王に詳しいのだろう」
「ちょうどいいので、私の知っていることをみなさんにお話しておきましょう」
そう言ってミモザは魔王の正体について話を始めた。
「魔王の名はカーマインという。もとは黄金の精強六武威の一人で筆頭の席についていた。ちなみにメイズも六武威であり、彼は第二席についていた。アリザリンはちがうがね」
普段は寡黙と言ってもいいぐらい必要なこと以外は口を開かない彼だが、意外にも流暢に話し出す。
「ところが、今からちょうど100年前にカーマインが教皇と面会したことがあったのだ」
「そしてそのあと突然、カーマインは六武威をはなれ魔族の独立を宣言した。それに対し、教皇が魔王を討伐すべしと宣戦布告した、と聞いている」
「そのあと、われら黄金の精強六武威をあつめた教皇は」
『あのもの、魔族のカーマインはわしに対しゴールド王国をはじめ国々を滅ぼしてやると宣言してきた。とくに人族は奴隷として子々孫々までひどく扱ってやると言ったのじゃ』
『どうか、六武威の名前を戴く英雄たちよ。あの暴虐な魔王をとめてくれ。元六武威であったからにはお主ら以外の者が止めることは困難であろう』
「そう教皇猊下はわれら六武威に対し仰せになったのだ」
淡々と語るミモザも不思議な光景だが、それ以上に話の内容が衝撃的だった。
驚きの表情を浮かべるパーティの仲間をよそに、ミモザは話を続ける。
「カーマインの反乱についていったのは六武威のなかではメイズだけだった。詳しくは知らないがメイズとカーマインは元々関係が深い」
「カーマインが六武威に名を連ねるきっかけもメイズがいるからだと聞いていたし、はっきりとは知らないがメイズはカーマインの親代わりだったと聞く」
「しかし、六武威のなかにはもう一人魔族がいてな。名をフラグラントといい大陸十賢者の一人だ」
「カーマインは魔族の王国を造ると宣言しているそうだが、メイズもフラグラントもゴールド王国や聖教会に不満は持っていなかった」
「故に、本当の目的は違うのだろうな」
(魔族は国を造って3度も失敗している。メイズが今さら魔族の国を造るのに賛成するとは思えない)
ミモザが話を中断した時を見計らってラベンダーが質問をした。
「なぜ、魔王カーマインは「反乱」などということをしたのでしょう。またメイズたちはなぜそんな魔王についていったのでしょう?」
ミモザはそれに対してゆっくりとだが断定する口調で、
「理由はわからない」
「が、六武威という称号は200年前にできたものだ。最初は3人から始まり、三武威と言われていた。私もその最初の3人の内の一人だ」
え、そうなのと軽くキースが驚きの表情をする。
「あれは、ゴールド王国の建国と魔導技術共和国パールの崩壊の間の出来事だった」
キースが思わず腰を折る。
「ちょ、そのパールっていう国の崩壊って何年前なの?」
「ゴールド王国の建国とも重なるので、ざっと200年ほど前か」
とミモザはさらりと答える。
「ミモザさん、年齢の概念どうなってるんですか」
キースは頭を抱えた。
そんなキースをおいてミモザは淡々と話を続けた。
「そのときも表には出ない事件がいくつかあった。私も知っているが言う気はない」
口に出しても不愉快だしな、と小さい声でつぶやく。
「また、聖教会の教皇にいたっては、魔導技術共和国パールの成立よりもはるか昔から存在している」
「・・・・それだけ長く生きていれば誰にも言えない闇の一つや二つは生まれるものだ」
「きっとわれらの知らない何かがあるんだろう」
ミモザはここではない遠くのほうを見るような眼をして続きを話す。
「私も三武威の創立からその座についているが、魔王カーマインは150年前に六武威の座についたばかりであった」
「その当時は名前が知られておらず、みな不思議がっていた。なぜそのような無名の者を迎えるのかと」
「にもかかわらず、圧倒的な魔力で瞬く間に六武威筆頭の座についたのだ。なぜそれまで実力が隠されていたのかわからない。なにか訳があるのだろうな」
話をきいていた一同は初めて聞く内容に驚いていたし、その長い年数にも驚いていた。
150年前がほんの、と言ってしまうミモザも時間の感覚が違う。
人族では考えられないスケールの長い話だ。
「精強六武威とカーマイン、そして教皇との関係について私の知っていることはこれぐらいだな」
「・・・・・・・・あ、あともう1個あった。魔王討伐には関係ないだろうが。実は、六武威の座についているにもかかわらず人前に顔を出さない者が一人いるのだ」
「精強六武威の末席に当たるものだ。この者の存在は明らかにされていない。ただナイルと言う名前と龍族だということしか分かっていないのだ」
「これで本当に私のしっていることはすべてだ」
話が終わると、ミモザは再び前のような寡黙な雰囲気をまとわせた。
おとぎ話でしか知らなかった精強六武威の詳しい内情は衝撃的だったので、しばらくはだれも口を開ける者はいなかった。




