第2部 おまけ1 ゴールド王国 王太子付き侍従の日常
「さあ、今日もはりきって仕事にのぞむぞ!!」
パシッと男は自分のほっぺたを叩いて気合を入れた。
いまは、朝。
男はベッドから起き上がり服を着替えて、窓から朝日をあびながら自分に気合をいれる。
この男はゴールド王国王太子クラレット付き侍従の一人。
王太子クラレット様はゴールデア女王に代わって政務を行っているので王太子を補佐するため、複数の侍従がサポートに入っている。
実質、王太子クラレット様は女王と並ぶ存在になったと言える。
そのうえ、ゴールド王国内外をなやましている魔王の侵略と魔物の恐怖を打ち払うべく王族である王太子クラレット様は魔物討伐の軍の先頭にたつこともある。
なので、必要最低限の執務をおえて魔物討伐の遠征に向かうのが王太子クラレット様の仕事なのだ。
今日は、王太子クラレット様が1週間ぶりに魔物討伐から帰ってくる日。
王太子クラレット様は、お帰りになると、入浴、食事、すこしの休みをとってから政務室に入られ、政務を執ることになっている。
われわれ侍従の役割はクラレット様がいざ政務室で政務をとるときに、みやすく、わかりやすく、書類を処理して頂けるようにサポートすることが主な役割と言っていい。
そうこうしているうちにクラレット様がお帰りになったようだ。
その御触れが聞こえてきたので私はあわてて王宮のホールへ走る。
そこにはつかれた表情をしたクラレット様が
「やあ、ただいま、いま帰ったよ」
そう使用人たちに声をかけながら入ってくるところであった。
ああ、疲れた顔も神々しい。
不謹慎ではあるが、クラレット様のご尊顔を拝すると日ごろの疲れも吹っ飛んでしまう。
同じ男性とは思えないほど顔の作りが違う。
あの神秘的な赤髪。そして男性も女性も虜にしてしまうようなあの赤い瞳。
見るのももったいないぐらいの美貌だ。
わたしの命をささげるにふさわしいお方と言えよう。
ああ、同じ男だけど、抱かれたい。
この方に抱かれる女性がうらやましい。
婚約者はクラウド王国の女王陛下だそうだ。
この方ほどであれば婚約者すら王族、それも一国の王になるのだな。
もちろん、お相手の女王陛下もかなり美人だと聞いている。
美人同士お似合いなんだろうなあ。
じつは、ゴールド王国の国民のあいだでもクラレット様の人気は大変なものである。
美形だからとか強いからというのもあるが、もうひとつの人気のもとはその経歴にある。
クラレット様は以前はウィスタリア聖教国という我が国と同盟を結んでいる国で騎士をしていた。
当時は孤児だと思われていたので孤児で平民。
しかし、その実力で騎士団の団長に上り詰めた。
その騎士団を率いてクラレット様は多くの魔物をバッタバッタとなぎたおし功績をつんでいく。
ついには、ゴールド王国の六武威のひとりにまで選ばれるという快挙を達成する。
ちなみに人族であるクラレット様が六武威に選ばれるのは六武威史上はじめてのことらしい。
六武威はその格式から人族は選ばれにくかった。
龍族と魔族とエルフ族が主なのだ。
それを人族でありながらその実力だけで六武威に食い込んだのがわれらが「英太子」殿下だ。
そして、感動のハイライト。
実はクラレット様がゴールド王国で15年前に処刑された悲劇の王子の忘れ形見であったという事実!!!
言っててわたしも涙が出そうになった。感動のあまりに。
とまあ、こんな経歴をおもちの王太子殿下なので庶民のあいだでも歌になったり、詩になったり、劇になったりとで大人気なのだ。
ちなみに、よく使われるタイトルが「英太子立志伝」というらしい。
わたし的には、「赤髪の王太子の成り上がり」とか、「転生したらクラレットでした」もよいと思うのだが。
いや、転生はしてないからダメか。
それならラベンダーどののパーティにいたサンドベージュどのは元団長で盾担当だから「盾の団長の成り上がり」とかはどう?
などとくだらないことを考えつつも、今日も私は書類の山と格闘するのでした。




