第13話
邪神が封じられたあと、その場には、重い沈黙が落ちていた。
戦いは終わった。
確かに、終わったはずなのに。
誰一人として、すぐに安堵の声を上げることはできなかった。
ラベンダーは、地面に座り込んでいるホワイトのそばに駆け寄る。
「ホワイト君」
呼びかけると、ホワイトはゆっくりと目を開いた。
「ラベンダー?」
その声は、かすれていたが、確かに生きている声だった。
ラベンダーは、それだけで胸がいっぱいになり、思わず涙がこぼれそうになるのを必死でこらえた。
「よかった。本当に・・・・・」
ホワイトは、ラベンダーの表情を見て、少しだけ困ったように笑う。
「また、心配かけたな」
「ううん、いいの」
ホワイトはそのまま、意識を失い寝てしまった。
心配そうだが、どこか安心した表情をするラベンダーが側についている。
二人のやり取りを、少し離れた場所から見ていた聖女ケイトは、なぜか胸の奥がざわつくのを感じていた。
(あれ?この2人って)
(“仲間”っていう距離感じゃ、ない?)
だが、その違和感を言葉にする前に、大きな音が周囲に響いた。
――ズズズズズ・・・・
拠点のあった方角から、地鳴りのような振動が伝わってくる。
ラベンダーが顔を上げる。
「拠点が崩れている?」
その瞬間、イオニーアが静かに告げた。
「何かが来ます」
次の瞬間、崩壊する拠点の中から、二つの影がこちらへ向かって飛来してきた。
スレートとサンドベージュが、即座に前へ出て盾を構える。
「みんな、下がって!」
だが、その二つの影は、攻撃ではなかった。
地面に静かに降り立ったのは――
六武威の弓騎士ミモザと、十賢者の一人ベルフラワーだった。
二人とも、無事だ。
ラベンダーは、思わず安堵の息を吐いた。
「よかった・・・・」
だが、その直後、胸に別の不安が浮かぶ。
「あの」
「パウダーさんは・・・・?」
その問いに、ミモザが一歩前に出て、静かに口を開いた。
「空の勇者ラベンダー殿」
「まず、無事であることをお喜び申し上げます」
その丁寧な口調に、ラベンダーは背筋を正す。
「大地の勇者パウダーについてですが」
ミモザは一瞬、視線を伏せ、そして、はっきりと言った。
「彼は、アリザリンを討ちました」
「え?」
一瞬、その場の空気が止まった。
ベルフラワーが、淡々と補足する。
「正確には、致命傷を与えたのは彼です」
「その後、拠点は暴走を始め、我々は脱出を優先しました」
「彼は、自力で脱出しています」
その言葉を聞いて、ラベンダーは胸をなでおろした。
「そう、無事で、よかった・・・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
一方。
勇者一行の様子を、イオニーアとシェーラは黙って見ていた。
二人の視線は、横になっているホワイトの“魂”に注がれている。
(ご主人様の魂に近い)
(でも、完全なそれではない)
(そして・・・・・)
シェーラは、ほんの一瞬だけ、ラベンダーのほうを見る。
(ご主人様の魂に最も近い反応をしている・・・)
“ご主人様の魂”は、確実に、この場に存在しているのだ。
だが、何故だろう。
この沸き上がる不安感。
自分たちがとんでもない。思い違いをしてるような、そんな違和感を2人は感じとっている。
その正体が何なのか、いまだにわからなかった。




