第11話
異常事態に誰よりも早く反応したのは、私ラベンダーの従者であるイオニーアさんでした。
「気を付けてください。邪悪で強大な力をもつ何かが、あの空間から出現しますよ」
この警告のおかげで私はその場の誰よりも早く対応することができました。
裂け目から現れたのは――
おぞましく、禍々しい魔力。
天を衝く巨体。
圧倒的な威圧感。
私は、背筋が凍りました。
(邪神?)
ゴールド王国の王宮書庫で読んだ魔法書。
そこに描かれていた姿――
「創造神がつくりし七つの邪悪な災厄」
その一つに、あまりにも似ていたのです。
あのとき勇者であるならば知っておくべきことの一つだと言われ、託宣の巫女様が渡してくれた魔法書にのっていた姿を思い出します。
まるで、私が邪神と出会うことを知っていたかのよう。
だけど出会ってしまったからには対処をしないとこちらが死んでしまいます。
私は息を吸い、頭を切り替えました。
イオニーアさんが忠告してくれたこともあり、速やかに指示を出す。
「キースはみんなに防御魔法をかけて!!」
「サンドベージュとスレートさんは防御に専念すること。特に聖女ケイトさんをお願いね」
「残った私が攻撃をしかけます!」
キースは魔法担当であり、特に防御魔法が得意です。
盾役は二人いる。
回復役の聖女ケイトを中心に守れば、長期戦の形は作れる。
計算しながら指示をだしていきますが。
私は、攻めるしかない。
私は自身の最強技である極大雷撃魔法を邪神にはなったのです。
ぎゅおおおおおおおお、ががががああああ
私の周囲の魔力が渦となり電撃に形をかえ、電撃は邪神に撃ち抜かれる、はずだった。
しかし。
邪神は、一瞬で“同等の雷撃”を放ち、私の魔法を相殺した。
ありえない。
相殺には、同量の魔力量が必要。
それを、邪神は瞬時に見抜き、合わせてきた。
こんな化け物に勝てるだろうか?
私は背中に冷たい汗が流れるのを感じました。
これほどの化け物を相手にできるのはこの場では私しかいない。
他の者では瞬殺される。
キースが全力で防御魔法を張っていますが、邪神の魔法を防ぎきることはできないでしょう。
どうすればいいの?
私が邪神に対する手立てを模索していたそのとき。
シャドウとなのる剣士、本当はホワイト君だけど、その者が火属性の魔法の詠唱を唱え始めたのです。
「おい、その程度の魔法では無駄だ!」
キースがそう忠告しましたが、シャドウは詠唱をやめませんでした。
あの邪神に、普通の火魔法が通るはずがない。
ところが、シャドウは詠唱を終えた火属性の魔法を自らの肉体に向かって放った。
私は思わず悲鳴をあげそうになりました。
キースもシャドウが気が狂ったのかと勘違いし、聖女ケイトさんはあわてて回復魔法をかけようとまでしました。
しかし、次の瞬間。
シャドウの身体に、ダメージは出なかったのです。
むしろ、火の魔力が彼の全身にまとわりつき――
剣の攻撃力が上がった・・・。
炎を身にまといながら、シャドウは邪神へ踏み込んだ。
一閃。
邪神の身体にかすり傷が走りました。
「通った?」
その場の全員が凍りつく。
傷は浅い。だが、確かに傷つけた。
ところが、シャドウだけは悔しそうに歯噛みしていました。
邪神に傷を負わせたと言ってもかすり傷。
「くそ!!この程度のダメージしか与えられないのか!こんなだったら、一体何のためにこの身を削ってまでこの力を手に入れたのか、わからない」
そう嘆くシャドウの言葉を聞いた私はあることに気づきました。
シャドウの体から生命力がごっそり減ったのです。
(寿命を削ってる?)
私の心臓が嫌な音を立てる。
――でも、答えを探してる暇はない。
邪神は、笑っている。
私とシャドウが攻める。
他の者たちが守る。
その形で、やるしかない。
「合わせるよ、ホワイト君」
私は、魔力を解き放った。
極大呪文を次々と。




