第9話
「なぜ・・・・・・僕だとわかったんだ?」
そう問い返したシャドウもとい、ホワイトの言葉にラベンダーはその黒い瞳を輝かせ、
「最初は気のせいかもと思ったの」
「でも、仕草や顔を動かすタイミング、剣をふるう動作の入り方、いっぱい、いっぱい、ホワイト君の癖があったよ」
彼女は、微笑む。
「ずっと、ずっと、あなたを見てきたもの・・・・」
その笑顔に、ホワイトは言葉を失った。
実際には、従者のイオニーアから教えられていた。
だがそれでも、改めて観察し、確信に至ったのは事実だった。
ラベンダーにとって、それは嘘ではなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ウィスタリア聖教国を襲った魔物の大群。
それを食い止めるため、ホワイトは自爆用の魔道具を身に付け、命を賭して戦った。
心臓は一度、確かに止まった。
大爆発が起き、国は救われた。
だが、救われたのは国だけではなかった。
ホワイトは、ぎりぎりのところで生き延びていた。
かつてラベンダーから贈られたペンダント。
そこには、身代わりの効果が付与されていたのだ。
ただし、全くの無傷とはいかなかった。
手足は壊れ、満身創痍だった。
それでも、命だけは、繋がっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
・・・・ラベンダーは、誰にでも優しい人だから。
ホワイトは思う。
自分への優しさも、幼なじみとしてのものなのだろう。
そう思う一方で、胸の奥に、淡い期待が浮かぶのも否定できなかった。
――どうすれば、彼女の隣に立てる男になれるのか。
ずっと、そればかり考えてきた。
彼女の評判は良く、評価は高く、誰からも愛されていた。
自分には、何一つ足りていないと感じていた。
だからこそ、禁断の力に手を伸ばした。
守れる力を得る代わりに、重い代償を背負うことになったとしても。
もう、後戻りはできない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「本当に生きていてくれてよかった。きっとクラレット君も喜ぶわ!!」
ラベンダーはそう言って、涙を滲ませながら抱きついてきた。
「たぶんラベンダーからもらったペンダントのおかげで命が助かったんだと思うよ。あれは身代わりの効果もあったみたいだ」
ラベンダーは泣きそうな声でだきつき、
「あなたが死んだと聞かされた時は本当に本当にショックだったのよ・・・・」
「・・・・心配かけて、ごめん」
「良かったよ。生きていてくれて。グスッ。グスッ」
僕は、そっと彼女の頭を撫でた。
「今は、目の前のアリザリンの討伐に集中しよう」
「僕たちのことは、みんなには伏せておいてほしい」
「・・・・うん」
「そうだよね、みんなにも変に心配かけちゃうし。でも、お願い。アリザリンの討伐がうまくいったら私とゆっくり話をする時間がほしい」
「それに・・・・これからは私といっしょに旅をしてほしい」
僕はその願いにうんとも言えず、だまってしまった。そんな僕をみてラベンダーは
「ごめんなさい。わがままをいって」
とシュンとし、寂しそうに仲間のもとへ戻っていった。
その様子をみて僕も思うところはあるが、いまはラベンダーの関係に頭を悩ませるべきじゃない。
僕は川面を見つめ、静かに息を整える。
さあ、戦いだ。
作戦会議のため、僕もまた仲間のもとへと戻っていった。




