第7話
どうも、ボクは大地の勇者パウダーの仲間として旅に同行しているスレートといいます。
仲間内では盾担当です。殴られ役です。痛くても泣きません。
実はボクには身の丈に合わない夢があります。
誰もが幸せに暮らせる『居場所』をつくること。
国でも、村でも、形はなんだっていい。
孤児や夫をなくした女性みたいに立場の弱い人が、搾取されず、安心して息をできる場所。
そういう場所を作りたいんです。
別に夢を持つくらい、構わないでしょ。
ボクには親はいないけど、ウェッジの村の人たちは優しかったんです。
だから、ウェッジの村のような優しい人がたくさんいる国を造りたいなって思うんです。
・・・・・はい、ボクの自己紹介はここまで。
突然ですが事件です。
なんと、空の勇者ラベンダー一行と我々大地の勇者パウダー一行がばったり出くわしたんです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
事の発端は、聖女ケイト様が手に入れた情報でした。
魔王の側近の一人、アリザリンという魔族が拠点にしている地域。
そこへ向かうために、ボクたちは長い旅を続けてきました。
そしてやっと町を見つけたんです。
それまでずっと野宿だったんです。
野宿って、疲れが取れにくいんですよ。
女の身であるケイト様はもちろん、男三人も普通に消耗します。盾担当のボクは特に腰が死にます。
それでも道が整備されていなくて、どうしても野宿になった。
だからこそ――町の明かりが見えたときは、全員で喜びました。
温かいご飯。風呂。ベッド。
人類の三大勝利です。
町の名はネープルス。
このネープルスの町の近くの山に魔王の側近の拠点があるらしいと聞いてやって来ました。
情報通りでした。
ちなみに地図は、ボクとシャドウで交互に確認しながら進みました。
パウダーは地図を見ません。
見ないというか、たぶん理解できないので押し付けてきます。
ボクだって最初は分からなかったけど、シャドウに教えてもらって覚えたんだよ・・・パウダー。
地図って、分かると案外おもしろいのに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ネープルスの門までたどり着いて、門番と話して、門をくぐった――その瞬間でした。
目の前に、明らかに町の人と違う装いの旅人が五人。
最初は顔を知らなかったんです。
でも、すぐに分かりました。
町の人たちが、彼らを囲んで叫んでいたから。
「ラベンダー様が来てくださったぞ!これでネープルスの町も助かるぞ!」
「近くに拠点を構えている魔族をやっつけてくれるらしい!」
「勇者ラベンダー様!!町を救ってくれ!!」
――空の勇者ラベンダー一行。
門の周辺は、歓迎する町の人で埋め尽くされていました。
それを見たパウダーが、ぽつりと言ったんです。
「・・・・なんだこれ・・・・・・」
絶句、って感じでした。
ボク?
ボクは正直、震え上がりました。
このままパウダーが空の勇者に攻撃するんじゃないかって思ったので。
でも思ったよりパウダーは冷静でした。
町ぐるみで歓迎されている相手に手を出すのは得策じゃない。
そう判断したんでしょうね。
「・・・・・行くぞ」
それだけ言って、宿屋を探しに行きました。
ボクはホッとして、ため息をついて後を追いました。
・・・・・ただし、安心したのはそこまで。
宿屋の部屋に入るなり、パウダーはボクたちをギロッと睨んで叫んだんです。
「ぜってーーーーーあいつらには負けねええええええ!!」
「いいか!! 必ず空の勇者より先に! 魔王の側近をぶち殺ーーーーーーす!!」
・・・・・ほんと元気だな。
気持ちは分かるけど、先に風呂入ってご飯食べない?
ボクはシャドウとケイト様をそっと見ました。
二人とも同じ気持ちの顔をしていました。
ボクたちは、こっそりため息をついたんです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
翌朝。
朝食を食べて宿屋をでたところで、件の空の勇者様が待っていました。
空の勇者ラベンダー様はボクたちの姿を確認すると、
「あの・・・・・はじめまして。わたし、空の勇者の認定をうけましたラベンダーといいます。以後、お見知りおきください」
そう言ってペコッと頭を下げて挨拶をしてくれました。
ボクはびっくりしました。
ウェッジの村では「空の勇者」の評判は最悪だったからです。
ですが、目の前にいる女性は少なくとも礼儀正しく、こちらに敵意をむけていません。
聖女ケイト様もシャドウも「よろしくお願いします」と頭を下げました。
それをみてボクもあわてて頭をさげようとした、その時。
「あんた、なんのつもりだ!!!」
パウダーが大きい声で返したのです。
「え?」
ラベンダー様は、本当に不思議そうな声を出しました。
「なんのつもりって・・・・あなた方は大地の勇者様のパーティと見受けました。なので、協力して近くに住む魔王の側近のアリザリンを共に討伐したいとおもったから・・・・」
おそるおそる、そう言います。
ボクはこの話は渡りに船だと思いました。
協力した方がいいに決まってる。
困っている人を守るためなら、速く確実に魔族を討つべきだ。
お互いに利益しかないですよ~~という視線をパウダーに向けましたが、パウダーはボクのそんな思惑をよそに、
「ことわーーーーーる!!」
「だいたいなんであんたたちと協力しないといけないんだ!!」
「アリザリンとやらは、この大地の勇者パウダーが、! 俺と俺の仲間がぶちころーーーーす!!」
大見えを切るパウダー。
ボクは頭の中でだけ、静かに叫びました。
(今それ言う? 今それ言う??)
やっぱりウェッジの村で植え付けられた先入観があるんだ。
空の勇者と協力するのは難しい――そう思った、その時でした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
突然町の周囲に大型の魔物が10匹出現しました。
どうやらアリザリンが放った魔物のよう。
ボクたちは町に被害がでるまえに迎撃態勢をとり討伐をすることにした。
しばらくして。
時間はかかったけど、大きな被害なく10匹すべて討伐できました。
ボクはひたすら、聖女ケイト様を背にしてパーティ全体の防御に徹しました。
攻撃担当のパウダーとシャドウが10匹の大型の魔物のうち2匹を相手にする。
しかし、空の勇者一行は、別格でした。
弓騎士が放つ矢が一瞬で大型の魔物の命を奪い、賢者2人の攻撃魔法が次々に大型の魔物の戦意をへし折る。
盾役らしい男が前に立ち、その後ろにいる勇者ラベンダー様が、極大魔法をはなち、魔物たちをまとめて吹き飛ばした。
比べるまでもありません。
相手とこちらの実力差は絶望的に開いていました。
パウダーも、それを理解したんでしょう。
さっきまでの刺々しさが、少しだけ消えました。
討伐が終わった後。
しぶしぶ、パウダーは言いました。
「・・・・分かった。アリザリンは、いっしょにやる」
――こうしてボクたちは、空の勇者一行と共同で、魔王の側近アリザリン討伐に向かうことになったのです。




