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第3話 交渉


第3話 交渉


折れた腕に巻いてた包帯を取り換えている村長が出迎えてくれた。


「おお、テオ アムリ 戻ったか…で、どうだった?精霊様には会えたか?」

「実は…」テオとアムリは1週間後までに具体的な交渉条件が必要なことを村長に話した。


「なるほどな、だが門前払いされなくてよかった。我々人間、モンスター達、精霊様達、

それぞれが納得のいくような条件をねん出しなくてはな」


本当にその通りだ。


「スライム達、今日はありがとう」

「大したことないップ」


そう言って、スライム達を撫でた。


「なあ、君たちを通してほかに協力してくれるモンスターがいないか呼び掛けてみてくれないか」

「わかったッペ」


「精霊様との交渉するから、できればモンスター達から信頼があるモンスターだといいんだが」

スライム達は話し合っている。


「それならオークキングの大将がいいかもしれないッポ。

見かけによらず情の熱いオークだッポ」


「お、オークキングか…」襲われたら無事では済まないだろう。

普通のオークさえ、武器がない今の俺たちにはどうにもできない。だが、


「わ、わかった。抑制力に繋がると思う」

(おいテオ!大丈夫なのかよ!)とアムリは耳元で訴えかけた。

(これしか選択肢がない!)と目線を落とさずに答えた。


「よし、じゃあオークキングを明日つれてくるップ、きっと来てくれるっプ。」

そう言って3匹のスライム達はガサゴソと茂みに消えていった。


「村長…どうしましょうか…」

「ん~取り戻した時の領地の配分、そこが一番の論点だろう」


精霊たちやモンスター達がどこまで縄張りを広げているのかわからない。

この答え次第でこの交渉は一瞬にして露と消える。それはそうだ。


「誰だって自分の領域が欲しい」

だから各家族は住処を作るんだ。


「かといって、今の村の面積だけでは生活ができないし、村を発展することができない」

自分で持ちかけておいて言うのもあれだが、非常に難しい、不利な問題だ。


「区画整備をすることが絶対条件だ。そうだ!」

ご自慢の髭を触りながらそう言うのは村の商人ルンさんだ。続けて彼は


「ほかの街や港へ続くあの道を開拓し、その道付近だけ発展させるという案はどうだろうか」


それを許容してくれるかわからないが、もし許容してくれるなら妥当な案かもしれない。

道とは言っているが、馬車1台通るのがやっとのぼこぼこ道だ。


「この村は野菜などの植物の栽培に関しては適した土地だ。最悪自給自足の生活は可能だ。

そこに少し猟ができる土地も含めた農耕地は必要だ」


子供を抱えながら言ったのは、裁縫屋のピックさんだ。

今までは森に入り勝手に狩りをしていたが、モンスターや精霊様がが協力してくれるとなれば、

出入りは許されなくなるだろう。


「いや、行商は必要不可欠。野菜を売って肉を買えばいい」とルンが言う。


腕を組もうとした村長は、骨折していたのを忘れていてとても痛がっていた。


「う~ん、農耕地と、道、どちらもというわけにはいかんだろう…」


図々しいにもほどがある。俺でもそう思う。

二極を天秤に置いたとき、現実的な案はこちらだろう。


そう言いカードを出す。

「俺は、道を作るほうに重きを置いたほうがいいと思う」

とテオは言った。


「森に入ったときに感じたんだ。彼らは人間にも魔族にも領域を侵されたくない」

妖精は無力な俺たちを怖がっていた。


「そうなると、森へは立ち入りを禁じて狩りはしない。肉を食べれるのは川を泳いでいる魚だけ。

行商が必要不可欠なので、限られた土地で農業を行い、野菜を売って行商をする」


村長がみんなの意見をまとめた。

「まあ、現実的にこれしかないか…この状況から考えても村を取り戻すだけでも御の字」


そしてテオは村長の背中を押すようにこう言った。

「モンスターや精霊達との双方納得の行く共存は、不干だと思う」


「ゴメンみんなちょっと待ってくれ、テオどうしたんだ。

お前そんな頭のよさそうな事言う奴だったか?」

アムリが茶化す。


「わからない、この森に逃げて暮らして窮地に立たされ、

何かの能力が発現したのかもしれない」


術は使えない物の、時に特殊な能力が開花することがある。これは大昔からあったことだ。


ある人は不思議な力で物体を操ったり、ある人は予知能力が芽生え、ある人は霊の類と会話が可能であるという噂だ。


人々はそれを スキル と呼んでいた。


「じゃあお前に発現したスキルは、交渉術だな」

そう言ってバンバンとアムリに背中を叩かれた。


「交渉術か…確かにそうかもしれない」


思い返してみれば、スライム達と出会っただけでここまでのことを閃き、

精霊との交渉までこぎつけるなんて学の無い俺たちには難しいだろう。


「なんだ…もっと 役に立つスキルがよかったな。催眠スキルとか」


「交渉術だって、見方を変えれば催眠だろ?いいじゃねえか!誇れよ!」

そう言ってアムリは激励してくれた。


「そうだとしたら、テオ、お前に交渉を任せてみるとしようか」

そう提案したのは村長だ。


「村長の意見に賛成だ。もともとお前が閃いたことだ。最後までお前が先導するべきだ」

ルンがそういうと、ピックもうなずいてくれた。


「わかった。自信ないけどやってみるよ!じゃあ、俺たちの要求はこれでいいか?」

と、人間の要求をまとめた。


そして翌日、村の女性陣が川で洗濯や、食器を洗っていると、桶の水が暴れだしたと驚いている。

やがてドシンドシンと音が聞こえてきた。


「おーいテオ!オーキキングの大将を連れてきたップ」

そう言ってオークキングと2匹のオーク、そしてスライム達が来た。


「なんだ人間、お前がテオか、ずいぶん軟弱な身体つきだ」

オークキングは喋れるらしい。


「おお、あなたがオークキングの大将!あなたが喋れるモンスターでよかった」


あの巨体に引かずしてこう言えるのは紛れもなく交渉術だと思う。俺はこの時に確信した。

だが、それでも脚は震えている。


「わざわざ出向いていただきありがとうございます。さっそく本題に入りましょう」

「村長、酒はある?」と小声で聞いたらOKOKと言ってブドウ酒を用意してくれた。


「おお、ブドウ酒!人間の作るブドウ酒は美味い。昔部下が戦利品として持ってきてくれた」

さりげなく怖いことを言っているが、ここは聞こえなかったことにしよう。


そうしてテオは、2週間ほど前に村を襲撃され、強奪されたことから話し始めた。


「大将、ここから相談ですが、モンスター達の手を貸していただき、

魔族を追い出す手伝いをしていただけないでしょうか」


大将は手に持つブドウ酒を飲み干した。



「人間、ここまで招かれたのだ、どういう策だ。策もなしに俺を呼びつけるなんてことはないだろう」

鋭い目から見える景色は、間違いなく俺の首元だろう。


「その前に、もし魔族を追い出すことに成功した場合、我々は外と貿易をするために、

港と隣の街に繋がる道を発展させたいと考えている。そして、もう一つあります」


そう言ってテオはカードを出す。


「森への不干をお約束します」


大将は村長におかわりをくれるかと言った。


「我々人間は、道付近の土地のみを使わせていただき、森へは立ち入らないようにします」

大将は腰につけていた大きな斧を部下のオークに渡した。


「ふん、なるほどのう。勝算はあるのか」

先に条件を提示した。これは話が進んだとみていいのだろうか…


恐る恐るテオは次のカードを出す。


「モンスター達と精霊様が人間と手を組んだ。

その噂がしれれば、魔族は恐れ、退く選択を取るはずだ」


大将は考えることもなく口を開いた。

「それは面白い。俺たちもいずれ魔族にはギャフンと言わせてやりたいと思っていた。

みな同じ気持ちだろう」


大将は大胆かつ大きな声で笑った。


「数百年にもわたり我々オーク族を好き勝手こき使ってくれた魔族に反逆の旗を振るか」

こんなに乗ってくれるとは思わなかった。


「じ、実はまだ精霊様からはOKをもらっていなくて、

6日後にまたここでお話しすることになってるんです」


「フルール様とシャバ様か、最後に会ったのは2年前の川の氾濫の復旧を手伝って以来かの」

モンスターと精霊様は本当に共存しあっているのか、驚きばかりだ。いや、何も知らなかったのだ。


大将は立ち上がった。


「その時にワシらも来よう、6日後と言ったな」

「大将!ありがとうございます!」


ここでガッツポーズが出そうだったが抑えた。


「村長、その時またブドウ酒いただけるか」

大将が村長に行った。


「む、村から持ち出せたのは残り2瓶。これでだけでよければ大盤振る舞いいたしますぞ。大将!」


嘘だ。大人は知っている。まだこの他にも6瓶残していることを。


こうして今日の交渉は良好に終わった。

そして迎えた6日後


「人間テオよ、改めて聞かせてもらおう」

精霊のフルール様が来て早々話を切り出した。


「フルール、お前はいつもせっかちで飽きっぽい。われにも話を詳しく聞かせてくれ」

湖の上で寝そべって喋っているのは、おそらく水の小精霊シャバ様だろう。


「シャバ、話を聞いていないのはあなたです。2回も説明したではありませんか」

な、なんだこの二人、仲が悪いのか?


「では、初めから話します」

そうして俺は、一連の出来事を説明し、区画整備の話をした。


「まあ、不干というのは双方望めばですが」

先日の大将のブドウ酒を飲む姿がふと蘇った。


テオは新たなカードを手に入れた。


「も、もしくは、我々と交易という未だかつて行ったことがないことが実現可能かもしれません」

とテオは思い付きの案を話した。


「というと?」と食いついてきたのは大将だ。


「武力を持たない人間、襲ってこない魔族、安全なテリトリーを得たモンスター達

これって、今までにない生活です。つまり、我々は新しい付き合い方ができるかもしれない」


そしてテオは手に入れたカードを大将に示す。

「大将!我々と交易すれば、いつでもブドウ酒を飲むことができるかもしれません」


水を差すように「ふっはっは、調子がいいな人間!」そう笑うのはシャバだ。

寝そべっていたシャバがテーブルに移動してきた。


「だが、自然を守ることができるなら、それもありだとアタシは思ったね」

シャバはそう言ってくれた。


「人間の細かい技術力が役に立つことがあるかもしれん。それに、ブドウ酒は美味い!」

大将も背中を押してくれたようだ。


「人間、いや、テオよ、この自然が保たれるならば、一度お前に騙されてみてもいいかもしれないな。

まあ変な真似をしたら、すぐに風がお前たちを切り刻むだろう」

フルール様も乗ってくれたようだ。シャレにならないが。


「じゃ、じゃあ、村の奪還に力を貸してくれるということで、問題ないでしょうか?」

精霊様も、大将も、首を縦に振ってくれた。


「安心しろ人間、上手くいかぬ時は、お前たちの首が飛ぶだけだ。がっはっは」

大将、シャレになりません。


「では、このまま具体的な作戦を練らせてください。」

そう言って魔族を追い出す作戦を考えることにした。


大将は「仲間を集める。4日、時間をくれ」とのことなので、

作戦決行は5日後に決定した。




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