蜘蛛
【95階層】蜘蛛
階段を降りた瞬間、違和感があった。
(……空気が変わった)
視界の先には、巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされていた。
上空から、壁から、床から──無数の糸が絡み合い、まるで巨大な迷宮のように広がっている。
──そして、感じる。
(この階層の主……俺が太刀打ちできる相手じゃない)
ゾクリと背筋を這う悪寒。
だが、ここまで「蜘蛛の感覚」のスキルを残せていたのは幸運だった。
このスキルがあれば……
(なんとなく、蜘蛛の位置がわかる)
細かい糸の振動、わずかな気配の流れ。
なるほど、これなら──この階層を切り抜けることができる。
慎重に進んでいると、巣の奥で何かがもがいているのが見えた。
(……人?)
エルフの旅人だった。
長い銀髪、優雅な耳のライン、だがその表情には明らかな焦りが浮かんでいる。
「困ってるようだな」
俺が声をかけると、エルフはこちらを見て驚いたようだった。
「……珍しい。あなたのような人間がここを通るなんて」
聞けば、彼は村に帰るため、この蜘蛛の迷宮を単身で突破しようとしていたらしい。
俺は同行を申し出た。
蜘蛛を避けるくらいなら、おそらくできる。
「……感謝する」
慎重に蜘蛛の巣の間を進みながら、エルフと会話する。
「あなたはダンジョンの攻略者なのか?」
「ああ。そっちもだろう?」
「違う。ここはダンジョンなどではない」
エルフのその言葉に、俺は思わず足を止めた。
「……どういう意味だ?」
「この蜘蛛たちは、ただの移動の途中だ。月日がたてば、またどこかへ去る」
……なるほど。
つまり、ここは一時的に蜘蛛の一団が集まっているだけの場所、ということか。
ダンジョンの一部かと思いきや、そうではない。
(……まぁ、そういうこともある)
このダンジョンでは、もはや何が起きても不思議じゃない。
エルフと共に蜘蛛の一団を切り抜ける。
エルフは安堵したようだが、まだ不安げな表情を浮かべていた。
まだしばらく命がけでここを通らなければならないらしい。
俺は「スキルを奪われし者」のスキルを発動し、蜘蛛の感覚のスキルをエルフに譲渡した。
エルフの目が驚きに見開かれる。
「……なぜ?」
「このスキルも貰ったものなんだ。多分そういうことなんだろう」
エルフは何かを言いかけたが、結局言葉にはせず、ただ深く頷いた。
俺は片手を挙げると、そのまま階段へ向かう。
ダンジョンの終わりは近い──
・リソース更新
スキル: 激しく踊りながら素早く移動して回避 / タコ殴り / 丸呑み / スキルを奪われし者 / 道草 / くしゃみ / 買い物上手 / 終焉 / いっぱしの冒険者の心 / 水洗トイレ / 最後に行きつくのはとげへの感謝
アイテム: まさひこのネームプレート / 鍵束 / 銀の音楽アルバム / 冒険者アレクセイの記憶 / スキル強化の秘宝 / 炎竜の鱗 / 嵐の小瓶
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / 魔法杖のヴァイオリン / 魔法反射の外套 / 大魔導士の腕輪 / 強者のグラサン / 強欲な盗賊の指輪 / 満たされた盗賊王のブーツ / ヴェルガル族のペンダント / 彷徨う捕食者の指輪




