魔法使いの学び舎
【93階層】魔法使いの学び舎
──気づけば、ローブの魔術師たちに囲まれていた。
……またか。
ただ、これは道草スキルの呪いじゃない。
「召喚か」
流石に何度も経験すると、感覚で分かるようになってくる。
「……あっ」
15歳に満たないぐらいだろうか。目の前でローブ姿の子供たちが固まっている。
呆然と俺を見上げていた。
……一方で、少し離れた場所では、大人の魔法使いがこちらに杖を向けている。
「あなたは、モンスターですかな?」
落ち着いた声。
──見れば、白髪の老人魔法使いが目を細めて俺を見ていた。
ひょうひょうとした雰囲気。
だが、只者ではない。
(かなりの腕だな……)
「いや、人間だ」
「ほう、そうですか」
「ちなみに召喚されるのも、割と慣れてる」
「それはまた奇特な方だ」
老人はくすくすと笑った。
どうやらここは魔法使いの学校らしい。
子供たちが魔法の練習用にモンスターを召喚していたら、俺が出てきてしまったらしい。
(……迷惑な話だな)
「どうやらあなたは、子供たちと戦わないと戻れないかもしれません」
「へえ……?」
「召喚術にはそういう仕組みがあることも多いのです。何か、きっかけのようなものがなければ、召喚された存在は元の世界へ還れないこともあります」
なるほど。
他にあてもないし、ここは大人しく付き合うとするか。
こうして俺は、魔法学校の子供たちと模擬戦をすることになった。
──開始。
子供たちはおっかなびっくり魔法を放ってくる。
(まあ、こうなるか)
俺は適当に魔法反射の外套で足元に弾き返してみる。
「えっ!?」「うわっ!」
自分に返ってきた魔法に慌てる子供たち。
──新鮮な反応だ。
次第に、彼らも本気になってきた。
四方八方から多様な魔法が飛んでくる。
(ほう、やるじゃないか)
俺は激しく踊りながら素早く移動して回避!
リズムに乗るようにステップを踏み、流れるように避けていく。
「すごい!」
「うおお、なんだそれ!」
子供たちの目が輝き始める。
だんだん楽しくなってきた。
「おらっ!」
俺はスキル水の渦を使って一気に加速。
トゲの体で驚かせたり、逆にトゲの魔法を飛ばしてきた相手には、ヴァイオリンでなでるように叩き落とす。
「ええええええ!?」
叫ぶ子供。
──次は、大きな魔法を敢えて丸呑みしてみる。
俺の体が光を吸い込むと、子供たちはさらに驚愕。
(……楽しいな、これ)
最後は足元に水の渦を展開し、全員を頭だけ地面から出た状態にしてみた。
「えっ!?」「なにこれ!?」
みんな、驚いている。
──こうして、模擬戦は終了した。
魔法で綺麗にされた子供たちは興奮した表情で語り合い、大人の魔法使いも満足そうだった。
その後、俺は質問攻めにあった。
「あなたはどこから来たのですか?」
「どんな冒険をしてきたの!?」
俺は、これまでの旅路を語って聞かせた。
嵐、女剣士、炎の竜ヴェルトガル、ドッペルゲンガー、異形の冒険者、海とサガラーサ、ベジタブルドリーマー、道草スキルの呪い、盗賊の市、駅、魔法使いの夜、トランプとタロット、謎のレース、トゲの丸呑み、ボスとの連戦、モイスチャー・シュトレーゼマン、厨房、いたずら妖精──。
語っているうちに、ふと懐かしい気持ちになる。
思えば、ずいぶん深くまで来たものだ。
──と、その時。
俺の体が消えかけた。
「……どうやら、次の階層へ向かう時が来たようだな」
消える直前、老人が魔法をかけてくれた。
ヴァイオリンが、ほんのりと光る。
(……杖にもなった?)
「少しだけ魔法などを、当てやすくなるかもしれませんよ」
老人が笑う。
俺はみんなに手を振り、旅立った。
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / 激しく踊りながら素早く移動して回避 / タコ殴り / 丸呑み / スキルを奪われし者 / 道草 / くしゃみ / 買い物上手 / 終焉 / いっぱしの冒険者の心 / 水洗トイレ / 最後に行きつくのはとげへの感謝
アイテム: まさひこのネームプレート / 鍵束 / 銀の音楽アルバム / 冒険者アレクセイの記憶 / スキル強化の秘宝 / 炎竜の鱗 / 嵐の小瓶
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / 魔法杖のヴァイオリン / 魔法反射の外套 / 大魔導士の腕輪 / 強者のグラサン / 強欲な盗賊の指輪 / 満たされた盗賊王のブーツ / ヴェルガル族のペンダント / 彷徨う捕食者の指輪 / 次元の指輪




