嵐
【92階層】嵐
熱い。
息苦しいほどの熱気が肌を焼く。
見渡す限りの砂──まるで地獄の釜の底のようだ。
「……嫌な予感がするな」
進むこと数歩、風に埋もれかけた白骨を見つけた。
冒険者のものだ。
装備や形からして、女性の遺体らしい。
──手元には謎の箱があった。
中を見ると、ひびの入った指輪と簡単な手紙。
嵐が来る。このアイテムでも助かることはできない。
私の冒険はここで終わる。
この手紙を読んだ方、どうかあなたは生き延びてください。
その文面に、乾いた唾を飲み込む。
(……やばいな)
嵐が来る。
ただの砂嵐じゃない。きっと常識を超えた何かだ。
俺はそっと指輪を手に取った。
代わりに、おしゃれな髪飾りを箱に収める。
(……すまないな、受け取るぞ)
そのとき──
遠くの地平線が揺れた。
「……来るか」
見る間に、砂の大地が波打つ。
──嵐が来る。
全身の細胞が逃げろと警告している。
だが、道草スキルで飛んでも、嵐の中に出たら一発で終わりだ。
なら──
「……掘るしかないな」
俺は水の渦を発動し、砂を掘り進める。
猛烈な風。
強い、いや──異常なほどの強さだ。
視界に収まりきらないほどの巨大な風の塊が押し寄せてくる。こんなものに巻き込まれたら、意識を保つことすらできないだろう。
「……まずいな」
かなり深く掘ったが、嫌な感じはぬぐえない。念のためアイテム「小さな杖」を使う。
杖を土に突き立て、魔法の力で地下に小さな部屋を作る。
──が。
(……嘘だろ?)
轟音とともに、地中の部屋ごと破壊される感覚。
この嵐……常識を超え、すべてを破壊する力だ。地下すらえぐり取られてしまうらしい。
小部屋はしばらく耐えていたが、ついに限界を迎え──
俺ごと、地面が吹き飛ばされそうになる。
「くそっ!!」
風に巻かれ、部屋が吹き飛ばされていく。
(このままじゃ……死ぬ!)
俺は最後の手段に出た。
アイテム「魔法の小瓶」を使用!
さらに、スキル「丸呑み」と「終焉」を瓶に発動!
「……嵐を、吸い取れ!!」
──小瓶が唸るような音を立てる。
暴風が小瓶へと吸い込まれていく。
だが。
(……やばい)
──瓶が、大きく暴れ始めた。
びしっ!
ひびが入る。
(まずいまずいまずい!!)
俺は瓶を必死に押さえつける。
「うおおおおおおお!!」
どれだけの時間耐えただろうか。いや、ほんのわずかな時間だったのかもしれない──
……気づけば、嵐は通り過ぎていた。
俺の周囲以外、地面すらえぐり取られ吹き飛んでいる。
「……これが、嵐か」
俺はぐったりとその場に座り込んだ。
(……生き延びた)
俺は、嵐の試練を越えたのだ。
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / 激しく踊りながら素早く移動して回避 / タコ殴り / 丸呑み / スキルを奪われし者 / 道草 / くしゃみ / 買い物上手 / 終焉 / いっぱしの冒険者の心 / 水洗トイレ / 最後に行きつくのはとげへの感謝
アイテム: まさひこのネームプレート / 鍵束 / 銀の音楽アルバム / 冒険者アレクセイの記憶 / スキル強化の秘宝 / 炎竜の鱗 / 嵐の小瓶
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / ヴァイオリン / 魔法反射の外套 / 大魔導士の腕輪 / 強者のグラサン / 強欲な盗賊の指輪 / 満たされた盗賊王のブーツ / ヴェルガル族のペンダント / 彷徨う捕食者の指輪 / 次元の指輪




