店と二人の客
【89階層】店と二人の客
階段を降りると、薄暗い広間の中央にぽつんと小さな店があった。
見覚えがある。
奥にいるのは、巨大なトカゲのようなモンスターの店主。
確か名前は──ザラス。
「おや、おやおやおや、これは非常に珍しい。同じ冒険者の方に二度お会いするなど、めったにあることではないのですが」
ザラスが目を細め、しっぽをゆっくりと揺らす。
驚いたようだが、それ以上に楽しんでいるようでもある。
「こんな下の階層で店をやれるあたり、あんたもただ者じゃないな」
「ふふ、良い商人とは常に最高の場所にいるものです」
ともあれ、買い物のチャンスだ。
「何かお買い物されていかれますか?」
俺は買い物上手のスキルを発動し、金貨の袋を見せる。
「これで一番良いものを」
ザラスはふむ、と考え込んだ。
しばし沈黙の後、静かに語る。
「よいでしょう。特別にこれを──スキル強化の秘宝」
スキルを一度だけ大きく強化できるアイテムのようだ。
買うと同時に、手に取った瞬間──
「……は?」
アイテムがボロボロと崩れ去った。
「どういうことだ……?」
「お客様はもう、そのアイテムを使用済みなようです。残念ですが、そういうことですので」
そんなバカな。
俺はこんなアイテムを使った記憶はない。
納得できずにいると、突然、横から声がかかった。
「俺が代わりに買おう」
いつの間にか、隣にいた。
泥棒の階層で会った異形の冒険者。
俺と同じ金貨の袋を手にしている。
ザラスは再び、ふむ……と考え込み
やがて納得したように頷いた。
「いいでしょう。こういう場に立ち会えるのも商人の醍醐味というものです」
満足そうに笑いながら、もう一つのスキル強化の秘宝を取り出し、俺へ手渡した。
「これで貸し借りなしだ」
異形の冒険者はそう言うと、姿を消した。
変わったやつだ。
だが、助けられたのだろう。
俺は心の中で礼を言い、次の階層へ向かう。
おそらく──次のボスの階へと。
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / 激しく踊りながら素早く移動して回避 / 輝く音剣二刀流タコ殴り乱舞 / 丸呑み / スキルを奪われし者 / 道草 / くしゃみ / 買い物上手 / 終焉 / いっぱしの冒険者の心 / 水洗トイレ / 最後に行きつくのはとげへの感謝
アイテム: まさひこのネームプレート / 鍵束 / 小さな杖 / 銀の音楽アルバム / 冒険者アレクセイの記憶 / スキル強化の秘宝 / 炎竜の鱗 / 魔法の小瓶
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / ヴァイオリン / おしゃれな髪飾り / 魔法反射の外套 / 大魔導士の腕輪 / 強者のグラサン / 強欲な盗賊の指輪 / 満たされた盗賊王のブーツ / ヴェルガル族のペンダント / 彷徨う捕食者の指輪 / 重騎士の宝剣




