海
【77階層】海
階段を下りていると──突然、足元が消えた。
「えっ?」
次の瞬間、俺は空に投げ出されていた。
──周囲は一面の青。
雲の間に浮かぶ無数の階段が見えるが、全ての位置が微妙にずれている。
「おいおい、これどういうことだよ……!」
とにかく落ちる。
下を見ると、そこには美しい大海原──に、加えて。
「……大渦じゃねえか!」
一見穏やかに見えたが、海の所々が巨大な渦を巻き、渦同士が激しくぶつかり合っている。とんでもない潮流だ。
──そんなところに落ちたらひとたまりもない。
「どっか、掴めそうな……!」
必死に手を伸ばす。
運よく、すぐ近くに浮かぶ階段が──
「──くっ!」
ギリギリ届かない。
──落下。
ドボォン!!
一瞬で渦に飲み込まれ、意識がぐるぐる回る。
「クソッ……アイテムを……」
──だが、使う余裕がない。
次々と渦が俺の体を呑み込み、さらに周囲には海の怪物たちの気配。
水中にうごめく無数の影が、ゆっくりと俺に近づいてくる。
「……ヤバいな」
このままでは絶体絶命だ。
そこで、俺はスキルを二つ組み合わせる。
「道草」と「終焉」。
──ワープ!
ビュン!
──だが、次の瞬間も海。
「ハァ!?」
もう一度。
──海。
何度跳んでも、どこにワープしても、俺は海の中から出られない。
「先に俺の息が終焉を迎える……っ」
限界が近づく。
もう、ダメか──
……いや、ダメもとでも、試せることはある。
「丸呑みと終焉……!」
──その瞬間、世界が変わった。
海が、俺の中に流れ込む。
全ての水が、口から俺の体に吸い込まれる。
「なっ……」
周囲の水から酸素を取り込んでいるのか、俺は水中なのに呼吸ができた。
さらに、俺の体を中心に渦が生まれる。
……いや、違う。
──俺自身が、大渦になっている。
「なん……だと?」
──止まらない。
渦が大渦を呼び、周囲の海水がどんどん俺に飲み込まれていく。
海の怪物たちすら巻き込まれる。
さらに、俺の周囲で何かが砕ける音がした。
なんだ…
──何かが大きく変わった。
丸呑みのスキルが、今までと比べ物にならないほど強化されている。
「やばい……やばい……!!」
自分でも止められない。
全ての海を、俺が呑み尽くしてしまう。
次の瞬間。
気づくと俺は泥の地面に立っていた。
──海は、もうない。
「……俺、海を全部呑んだのか?」
呆然としていると、俺の脳内に新しいスキルの名前が浮かんできた。
『水洗トイレ』
「………………は?」
俺は新しく水洗トイレのスキルを手に入れてしまったらしい。
……このスキル名、なんとかならなかったのか?
頭を抱えつつ、足元の下り階段へと向かった。
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / 激しく踊りながら素早く移動して回避 / タコ殴り / 丸呑み / 地面に溶け込んで移動 / 道草 / くしゃみ / 買い物上手 / 終焉 / 満たされない心 / 水洗トイレ
アイテム: 誰かの目玉 / まさひこのネームプレート / 針×2 / 鍵束 / 茶色い液(残り半分) / 巻き戻しの巻物 / 小さな杖 / 銀の音楽アルバム / 冒険者アレクセイの記憶 / 金貨の袋 / 炎竜の鱗
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / ヴァイオリン / おしゃれな髪飾り / 魔法反射の外套 / 大魔導士の腕輪 / 強者のグラサン / 強欲な盗賊の指輪 / 満たされた盗賊王のブーツ / ヴェルガル族のペンダント




