右手
【5階層】右手
何かの気配——
「……っ!?」
突如、視界の端から**白く巨大な“右手”**が飛んできた。
咄嗟に身を屈める。
ズアッ!!!
巨大な手が空を切り、風圧が頬をかすめた。
「……何だ、こいつは……!」
すぐに態勢を立て直す。
見ると、その手は指をゆっくりと動かしながら宙を漂っている。
どうやら“胴体”はなく、“右手”単体で生きているらしい。
そして——
ギチッ、ギチッ
五本の指が、まるで意思を持つように曲がり、こちらを狙い定めていた。
「……なるほどな」
次の瞬間——
手が襲いかかってきた!
五本の指がバラバラに動き、異なる角度から攻撃してくる!
ナイフを構えて応戦するが、全部は捌ききれない!
(やばい、これは普通に戦ってたら負ける!)
一度距離を取る。
しかし——
「っ……!」
少し間を置いた後、右手は勢いをつけて突進してきた!
考えろ……考えろ……。
(五本の指が個別に動く……なら、逆にそこを利用する!)
俺は鍵爪付きロープを握りしめる。
さらに、蜘蛛の感覚のスキルを発動——
指の動きを見極める。
「……よし、かかった!」
ロープを素早く操り、五つの輪を作る。
敵の指が伸びた瞬間、それを指輪のようにはめていく!
「一本……二本……三本……!」
指を一本ずつ固定し、次第に動きを封じていく。
最後の一本がかかった瞬間——一気にロープを引く!
バチンッ!
まるで梱包された荷物のように、敵の手がきつく縛り上げられた。
身動きが取れなくなったところに——
「——お返しだ!!」
全力でボコす!
ドン! ドン! ドン!!
——バキィッ!!
手が砕ける音が響く。
「……ふぅ」
白い手はピクリとも動かなくなった。
(……強敵だったな)
だんだん理解してきた。
このダンジョンのモンスターはスキル無しで戦える相手たちではない。
その瞬間、またしても頭に情報が流れ込む。
(スキル……『右手強化』?)
右手に力がみなぎる。
試しに拳を握ると、まるで自分の右手だけが鍛え抜かれた武器になったような感覚。
「これは……悪くないな」
強くなった右手の感覚を確かめながら、次の階へ進む。
・リソース更新
スキル: 炎の心得 / 魚変化 / 蜘蛛の感覚 / 右手強化
アイテム: 薬草
装備: バッグ / ナイフ / 耐熱の手袋 / 鍵爪付きロープ