ウニ
【43階層】ウニ
目の前の壁のような影が、ゆっくりと動いた。
──違う。これは壁なんかじゃない。
「……デカいウニ、か」
それは直径3メートルはあろうかという巨大なウニだった。無数の鋭い針が放射状に広がり、微かに蠢いている。まるでこちらを品定めしているかのように。
「……さて、どうするか」
俺は試しに「怒りと悲しみの声」を発動する。
ウニに向かって、悲鳴と怒号の混じった音が放たれる──が。
「……無反応、か」
巨大ウニは微動だにしない。知能が低いのか、それともただ単に効果がないのか。
ならば、と俺は次に「王の風格」を試した。
威圧感を強め、覇気を全開にする。普通の生き物なら、本能的にひるむはず──
──が。
やはりウニには関係なかった。
むしろ、わずかに震えたように見えたと思った瞬間──
ゴゴゴゴ……!!
突然、ウニが回転を始めた。
「おいおいおい……っ!」
目にも止まらぬ速度でこちらに転がってくる。まるで巨大なトゲ付き鉄球だ。
俺は「影走り」を発動し、横へ跳ぶ。ギリギリで回避したが、床に当たったウニは石を砕き、深々と食い込んでいた。
──この攻撃、まともに食らったら終わる。
ヴァイオリンで試しに一撃加えてみたが、手に伝わる感触はまるで岩を叩いたようだった。
ならば──
「またやるしかないっていうのか……」
腹を決めるしかなさそうだ。
「丸呑み」
突進してくるウニの針と針の間に、強引に頭から突っ込む。
──ズブズブッ!
全身に針が突き刺さる感触。痛みが脳を焼く。
「がっ……!!!」
だが、俺は耐えた。
明らかに丸呑みが上手くなっているのを感じる。
そのまま喉を広げ、スキルを全力で発動していく。
──ゴリゴリゴリ……!
丸呑みに引きずり込まれたウニは、俺の体内で強引に分解されていく。
五感が狂うほどの痛み。全身に冷や汗が流れたが、ついに──
「……ッ、消えたか……!」
俺の体が、小さな変化を起こしていた。傷は深いが、針に対する耐性が少しだけついた気がする。
それだけではない。
──針だらけの体のスキルが、さらに針だらけの体、に進化した。
皮膚の感覚が変化し、外部からの刺激に鈍くなったような感覚がある。トゲの痛みが完全に消えたわけではないが、さっきよりも耐えられそうだ。
「もうトゲに耐えるような経験はごめんだけどな……」
俺は血だらけの体を引きずりながら、次の階層へ向かった。
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / コスモバスター / 影走り / タコ殴り / 丸呑み / 怒りと悲しみの声 / 回復体質 / 獣の膂力 / さらに針だらけの体 / 王の風格
アイテム: 大量の懸賞金 / 学校の教科書 / 誰かの目玉 / まさひこのネームプレート / ウナギ / 針×2
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / ヴァイオリン / おしゃれな髪飾り / 奇跡の指輪




