巨体のハリネズミ
【41階層】巨体のハリネズミ
階段を降りた瞬間、俺はすぐに違和感を覚えた。
空気が、やたらと重い。
「……ん?」
床は岩盤のように硬く、壁には無数の小さな穴が開いている。罠か? それとも、何かの巣か?
警戒しながら歩みを進めたその瞬間──
シュッ!
鋭い音がしたかと思うと、俺の目の前を何かが掠めた。
「っ!」
すぐに影走りで後方へ飛ぶ。その瞬間、何本もの針が俺のいた場所に突き刺さった。
──まずい。
目を向けると、巨体のハリネズミがゆっくりと姿を現していた。
デカい。
いや、デカすぎる。
四足で歩くその体は、俺の身長の三倍はある。鋼のような針が無数に逆立ち、赤黒い目が俺を睨みつけていた。
──コイツ、どう見てもただのハリネズミじゃない。
強敵だ。
「……やるしかないか」
俺はヴァイオリンを構え、間合いを詰めた。
しかし、
バシュッ!
鋭い針が空気を裂き、弾丸のように飛んでくる。なんとか躱し一撃を加えるが。
「効かねぇのかよ!」
ハリネズミの巨体は揺れることもなく、俺を一瞥しただけだった。
タコ殴りで殴りつけても、まるでダメージが通らない。獣の膂力で力を増しても結果は同じだった。
「クソ、まともな攻撃が通らない……!」
逃げ場がない。
四方の壁には針が無数に突き刺さり、足元もすでに危険地帯と化している。
このままじゃ、ジリ貧だ。
──最後の手段。
俺は深く息を吸い込み、立ち上がった。
「……お前を喰らうしかないな」
丸呑み。
全身の筋力を振り絞り、俺はハリネズミに向かって突撃した。
飛び交う針をギリギリで避けながら、ヤツの巨体に組み付き、喉を広げる。
「……がっ……!」
だが、想像以上の負担が俺の身体に襲いかかる。
相手は巨大なハリネズミだ。皮膚も硬く、無理やり飲み込もうとすれば、内臓がズタズタになるかもしれない。
それでも、やるしかない。
──喰え。
喰って、喰って、喰い尽くせ。
「……っ!!」
目の前が暗転し、意識が遠のく。
──次に目を覚ましたとき、俺は血まみれの床に倒れていた。
全身が傷だらけだ。皮膚に無数の小さな傷が走り、少しでも動かせば激痛が走る。
「……生きてる、か」
なんとか、勝ったらしい。
俺は震える手でバッグを探り、床に転がっていた一本の針を拾った。
「せめて、戦利品は持ち帰らないとな」
──スキル【針だらけの体】を獲得。
その代償として、何かのスキルを諦めなくては。
だが、大きなダメージで頭がうまく働かない。
……ぶち込むにしようか。
ぶち込むのスキルを諦め、針だらけの体を獲得した。
俺はよろよろと立ち上がり、次の階層へと足を向けた。
——
・リソース更新
スキル: 蜘蛛の感覚 / コスモバスター / 影走り / 持ち物台無し / タコ殴り / 丸呑み / 怒りと悲しみの声 / 回復体質 / 獣の膂力 / 針だらけの体
アイテム: 大量の懸賞金 / 学校の教科書 / 誰かの目玉 / まさひこのネームプレート / ウナギ
装備: バッグ / 耐熱の手袋 / ヴァイオリン / おしゃれな髪飾り / 奇跡の指輪




