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夕焼けの高原

【4階層】夕焼けの高原


階段を降りると、目の前に広がるのは——


「……何だ、これは?」


見渡す限りの高原。

赤く染まった空に、どこまでも続く黄金色の草原。


ここは屋内のダンジョンではないのか?


足元を確かめるが、確かに土の感触がある。

風が吹き抜け、草が揺れる音が心地よい。


(……今までの階とは明らかに違うな)


しばらく歩くと、遠くに一つの影を見つけた。


農夫のようなモンスター。


ボロボロの帽子をかぶり、シャベルを手にしたその姿は、一見するとただの人間の老人に見える。


だが、その足元には墓が並んでいる。

……墓守?


様子をうかがいながら近づくが、向こうは特にこちらを警戒する様子もない。


試しに声をかけてみる。


「……お前は?」


「おや、久しぶりですね。冒険に不慣れな方は」


喋った。


「私はこのダンジョンで墓守をしている者です。

 ……と言っても、趣味のようなものですが」


「趣味?」


「ええ、ここで死んだ冒険者の墓を作るのが好きなんですよ」


のんびりと語るモンスター。

言ってることは不穏だが、敵意はないらしい。


警戒しつつ話を続けると、どうやらこいつは俺に何かをくれるらしい。


「三つのうち、どれか一つを選んでください。

 一つは魔物使いになれるジョブの水晶。

 一つは仲間に出会える靴。

 そしてもう一つは蜘蛛の感覚のスキルです」


「……選べって?」


「はい。あなたの好きなものを」


悩む。


ジョブ? 靴? スキル?

そもそも、このダンジョンで仲間に出会えるなんて話があるのか?


「おすすめは?」


「おすすめはできませんねぇ」


墓守は微笑む。


「あなたに何が起こるかは私にはわかりませんから」


それはそうか。


「ですが……もし私が自分のために選ぶとしたら、蜘蛛の感覚でしょうね」


「理由は?」


「最近、このダンジョンには大きな蜘蛛が出るらしいのです。

 私はまだ出会ったことがありませんが、なんだか恐ろしいじゃないですか」


蜘蛛か……。


このダンジョンに何が潜んでいるかわからないが、少なくともこいつは大蜘蛛の存在を知っている。


(スキルを持っていた方がいいか……?)


「……なら、蜘蛛の感覚をもらおうかな」


「そうですか。では、お渡ししましょう」


墓守が手をかざすと、俺の頭にじんわりと何かが流れ込んできた。


スキル『蜘蛛の感覚』を獲得


視界が少し広がったような、周囲のわずかな動きを察知しやすくなったような——妙な感覚だ。


「ありがとう」


「いえいえ、あなたの墓を作るのが楽しみになってきましたよ」


「……は?」


「やはり知っている方の墓を作るのは格別ですから」


墓守は心底嬉しそうに笑った。


「……いや、失礼。心から幸運を願っています」


いったいどれだけ冒険者の墓を作ってきたのだろう……。


何とも言えない気分のまま、俺は次の階へ向かった。


・リソース更新

スキル: 炎の心得 / 魚変化 / 蜘蛛の感覚

アイテム: 薬草

装備: バッグ / ナイフ / 耐熱の手袋 / 鍵爪付きロープ


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