追い詰められた先
【3階層】追い詰められた先
階段を降りた瞬間、ガチンッと硬い音が響いた。
「……何だ?」
違和感を覚え、足を止める。しかし、それが判断ミスだった。
バシュッ!!
突然、太いロープが飛んできて俺の体に巻き付いた。
「ぐっ……!?」
その直後、鋭い痛みが走る。ロープには鍵爪が仕込まれており、俺の腕や胴に食い込んでいた。
「ちくしょう……ッ!」
体を捻ろうとするが、ロープがギチギチと締まって身動きが取れない。
そして、薄暗がりの奥から緑色の影が現れた。
「キヒヒ……!」
醜悪な笑い声を上げる、小柄なゴブリン。
こいつが仕掛けた罠か……!
ゴブリンはロープを引き寄せながら、手にしたナイフを舐めるように見つめている。
目はギラつき、俺をどう料理するか考えているのが伝わってくる。
「クソ……!」
焦りがこみ上げる。
……このままでは、さっきの階で見た白骨死体と同じ運命を辿る。
(こんなところで……終わるのか?)
ゴブリンがゆっくりとナイフを構え、俺の首元に迫る。
やられる。
だが——
「……いや、まだだ!」
俺にはスキルがある。
思い切って発動する。
「魚変化!!」
ポンッ
一瞬で体が縮まり、ロープの隙間からピチピチッと飛び跳ねる。
「キヒッ……?」
ゴブリンが驚愕の表情を浮かべた瞬間、俺はスキルを解除。
「……返すぜ!!」
瞬時に人間の姿に戻り、拘束を脱出。
その勢いのまま、渾身の拳をゴブリンの顔面に叩き込む!!
ドゴォッ!!
「ギャギィッ!?」
そのまま徹底的にボコす。ゴブリンは痙攣したかと思うと、そのまま動かなくなった。
「……はぁ、はぁ……何とかなったか」
息を整えながら、倒れたゴブリンを見下ろす。
「どんなスキルも使いようってことか」
魚変化なんて使い道がないと思っていたが、こういう形で役に立つとはな……。
ゴブリンが持っていた鍵爪付きロープを回収する。これは使えそうだ。
しかし——
スキルは得られなかった。
「……そういうこともあるのか」
ダンジョンのルールが少しずつ見えてくる。必ずしもスキルが手に入るとは限らない。
「まぁ、考えても仕方ない。気を取り直して次へ行くか」
俺は新たな装備を携え、次の階層へ向かった。
・リソース更新
スキル: 炎の心得 / 魚変化
アイテム: 薬草
装備: バッグ / ナイフ / 耐熱の手袋 / 鍵爪付きロープ