便所の不良
【10階層】ボス 便所の不良
階段を降りる途中で、なんとなく感じた。
(……次はボスか)
階段を降り切ると、目の前に広がっていたのは——
公衆トイレ。
「……………………」
俺は立ち尽くした。
ここが……ボスの部屋?
周囲を見回す。
白くタイル張りの床と壁。個室が並び、奥には洗面台。
何故かわかる。ここでは装備もアイテムも使えない。スキルのみが使用できる。
今は敵の雰囲気はない。
ただ、嫌な気配だけはビリビリと感じる。
(まあいい、こういう時はまず……)
俺はとりあえず、用を足した。
ガラッ
「……!」
扉が開き、学ランの不良が入ってきた。
無愛想な表情。
無造作にポケットへ突っ込まれた手。
腰には銀色のチェーンがぶら下がっている。
横で用を足し始める不良。
(えぇ……)
……しかし、わかった。
こいつと戦うことになる。
その確信が、不思議と湧いてきた。
次の瞬間——
——ドゴォッ!!
「ぐっ……!」
何の合図も無く突然、殴り合いが始まった。
俺は右手強化で殴る。
不良は、無骨な拳で殴り返してくる。
不良の動きは単純だが……重い。
(この野郎……喧嘩の場数が違う……!)
「くっ……!」
カウンターをもらう。
視界が揺れた。
(……ヤバい)
意識が……飛ぶ……!
一瞬でも隙があれば——!
俺は、へなちょこ冒険者の動きを使った。
——あえてよろめき、倒れかかるフリをする。
不良は一瞬、警戒を緩めた。
(ここだ……!!)
俺は、よろめきながら不良の腰のチェーンに手を伸ばす。
蜘蛛の感覚を発動——
腰のチェーンをほどいて弾き、不良の目にぶつけた。
「!?」
不良が怯んだ。
道具を使われるとは思っていなかったのか、相手の体勢が崩れる。
(……今しかない)
——右手を最大強化!
「喰らえぇぇぇぇ!!!」
渾身の拳を不良のこめかみに叩き込んだ。
——ドゴォ!!
不良と激突し、小便器が砕ける音。
学ランの不良は、ずずず……と崩れ落ちた。
(…………っ!)
勝った……が。
(し、死ぬ……)
力を振り絞り、アイテムを確認する。
アイテムや装備は使えるようになっていた。
(よかった……)
俺は、薬草を使って回復した。
「はぁ……」
気付くと『不良殴り』のスキルを獲得していた。
……
疲れた…
俺は少し気分が高揚していたのか、なぜか砕けた便器の欠片を記念に持っていくことにした。
最後に、きちんと手を洗い、俺はトイレを後にした。
——
・リソース更新
スキル: 炎の心得 / 魚変化 / 蜘蛛の感覚 / 右手強化 / コスモバスター / 伸びる頑丈な首 / へなちょこ冒険者の動き / 出会いの道 / 不良殴り
アイテム: 星の欠片 / くじ引き券 / 便器の欠片
装備: バッグ / ナイフ / 耐熱の手袋 / 鍵爪付きロープ / 古びた剣




