正反対3
「私というよりも、伝聞の一言で主任をああできる奥様の存在が凄いんですよ」
ぱたぱたと手を振ってカレーをまた一口食べると、園田さんが口を開いた。
「それでも、すばらしい手腕です。
七瀬さんには私が入社した頃お世話になっていましたが、その頃からあの状態だったので。
周りが言っても一切耳を貸さなかったんですよ」
今までずっと無表情だったのが、初めて少し呆れたような目になっている。
20代後半に見える園田さんがいつ入社したのかは知らないけど、七瀬主任どんだけエナジードリンクに頼ってきたんだ。
「そうなんですか?
七瀬主任とエナジードリンクは根深いんですねぇ。
まぁ、どうせまた午後になったら新しい缶開けてると思うので、チクって奥様からお灸をすえてもらうのが一番ですね」
スマホをプラプラと揺らすと、かつ丼を頬張っていた玉地が眉を上げた。
「そういえばふゆたろいつの間に美知留さんの連絡先ゲットしてたん。
社内一の美女の連絡先はトップシークレットのはずだけど」
「え?こないだ会ったときに。
七瀬主任のことチクったらまた教えてって」
「はぇ、そんなことであの男女ともに難攻不落の女帝を」
「愛だよ。
君からはかけ離れた感覚だろうけどね」
「なんて暴言をさらっと吐くんだふゆたろ。
まったく、恐ろしい子」
玉地が眉を下げると、くすっと控えめに園田さんが笑った。




