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セフレもち男を好きになるということ  作者: 一華花
第一部 23歳のもやもやする初恋
42/56

玉地魁人、28歳_Ⅱ

ーーーー

ーー


「たまくんて、彼女作らないの?」


「いらんね」


一服しながらベッドの上の女に即答すると、女は苦笑いした。


「ふは、そんな警戒しないでよ。

ただの好奇心だよ」


「わかってるよん。

レイナさんは社長狙いだもんね」


「そ」


すたすたとシャワー室に歩いていく後姿を追うことはせず、スマホに目を落とす。


ぽちぽちと返信を打っていると、女性の割にはなかなか早いシャワーを終えたレイナさんが目の前に立っていた。


「だがしかし。

大学時代から君のことを面倒見てあげている私としては、君の恋愛事情はまぁまぁ酒の肴になるのよね。

前の彼女と別れてからもう1年たつんじゃない?」


「そうねぇ。もうそんなたちますか」


「女の子が周りにいないわけでもないし、性欲だってこの通りあるみたいだしね。」


肩をすくめたレイナさんは服を着始めて、スマホを置いた俺はぼけっとタバコを吸いながらそれを眺めていた。


「まぁ、それこそ性欲”だけ”はあるっていう状態かな」


ふぅんと聞いてるんだか聞いてないんだか曖昧な返事のあと、レイナさんは首を傾げた。


「職場の子を抱いちゃったって頭抱えてたことあったじゃない。

あの子とかイイ感じなのかなと思ってたけど。

さっきのスマホもその子なんじゃないの?」


「確かに同僚の子だけど…あれは俺史上の最大のミスだねぇ」


「最低なやつ」


「そうねぇ…」


ピロンとメッセージの通知が見えて、噂のふゆたろから怒った猫のスタンプが送られているのを横目に、思考を巡らす。


「なんで抱いちゃったの」


「…好奇心?」


「彼氏持ちの職場の女の子を?

まさかそこまでのリスクを負うほど好奇心旺盛とは思えないけど、君」


「タイミングすよ」


「ふぅん」


たぶんほんとに、ふゆたろのことを恋愛的な目で見たことはないけど、かといってセフレほど都合よく使ってやろうとか思うほど、適当に扱いたい女の子でもない。


魔がさしたとしか表現しようがないけど、自分でもまぁまぁひどい言い分だなとは思うから、上手く言葉を返すこともできない。


「ーほんとにタイミングだけって言い張るなら、ちゃんと筋は通しなさいね」


「というと?」


「もう28でしょ。自分で考えな。

君はたまに詰めが甘い時があるからね」


「つめたいなぁ」


成り行きで抱いた日、ふゆたろはほぼ処女上がりとは思えないほどあっけらかんとしていたけど。


あの日から今日まで、抱いたことをミスったなとは思いつつ、しかし後悔ばかりかといえばそうでもないんだよな


とか考えながらの仕事を終え、次の日ふゆたろに会ったら、なんと彼氏と別れていた。


レイナさんの一言が軽く頭をよぎったのは、仕方ないことだろう。


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