職場でセフレをつくってしまったおばかさん[3]
私と玉地のやり取りを見ていた2人の同僚がにやにやニコニコと声をかけてきて、「ヒューヒュー」とふざけている。
「仲良しかよ~」
「仲良しですねぇ」
玉地はガキか…と肩をすくめて、私は同僚たちに、にこっと笑った。
「仲良くやらせてもらってますぅ」
「…いじめられてますぅ」
横からかぶせるようにじとっと玉地が言うと、玉地の目の前に座っている鹿野ちゃんが笑ってチョコレートを差し出した。
「あっはは、顔やばいよ?
食べる?」
「食べるぅ。ええこやなぁ鹿野は。
たすかる」
調子いいなぁと笑う鹿野ちゃんは私にも一つチョコレートをくれた。
「ふゆこさんも、よかったらどうぞ~」
「ありがとん~。
カフェオレとチョコレートって最高だよねぇ」
少し単価お高めのチョコレートは、カフェオレにとても合う。
「ですよね~
私もついつい食べ過ぎちゃいますもん」
「わかる!」
にこにこと笑う鹿野ちゃんは妹系のかわいらしいぴっちぴち女子だ。
カラコンばっちし、まつげぎゃんぎゃん女子。
「じゃ、もいっこあげちゃいます!」
「天使?ありがたき幸せ」
そして、玉地と仲が良い。
玉地と鹿野ちゃんは同じ業務をしていて、よく話している。
他の人には敬語な鹿野ちゃんが唯一タメ口で親しげに話すのが玉地である。
「ありがと~」
大袈裟に手を組んで、斜め前の彼女から「ははぁっ」と恭しく受け取る。
その横でしれっと玉地もにこにこ手を伸ばしている。
「おれも~」
「まっちにはあげない」
ぷいっとpcに目線を戻した鹿野ちゃんが、上目遣いでにやりといたずらっぽく笑う。
……くっ、かわいい。
「なんで!?おれがいじめられてんのに!」
「日頃の行いじゃないですかぁ?」
つーんと首をそらしてイヤホンを掛けながら鹿野ちゃんはすげなくPCに視線を戻した。
ええぇ~とじゃれている玉地と鹿野ちゃんを横目に、私はもぐもぐとチョコレートを食べて、カフェオレでぐっと流し込んでから、pcにつなげたイヤホンを耳につける。
「……」
微妙な沈黙に玉地が横目でチラリと私を見る視線を感じる。
「―玉地、いいかげん朝礼はいれや。もう始まるぞ」
缶のエナジードリンクにストローを刺しながら、主任が冷めた目で玉地を見つめてる。
ちなみに始業からまだ10分ほどで2本目である。
「…あーい」
マイクをオフにして、小さく息をついた。
「…ふぅ…」
「どした。景気悪いぞ~」
絡まったイヤホンをほどきながら玉地がのぞき込んでくる。
対人との距離感が狂っている玉地はパーソナルスペースの概念がなく、芳しいチョコレートの香りが鼻につく。
じろりと横目で見つめて、ふんと顔を背けた。
「…うっさい。君の顔ほどじゃないよ」
あんたのせいかもね…て、言ってしまいたくなる。
「ひ、ひでぇ…」
「ふん」
…言えないけどさ