仕事詰めはろくなことがない【なんで別れたの?_4】
なんともない顔してる玉地に悔しさと、かといって決定的なことは言えない臆病な思いが混じって、ぼそっと八つ当たりすることしかできない。
「………孤独死も近いね」
「ひどい…」
自分の言動が元凶の、相手の言動に一喜一憂して、馬鹿みたいだなと思った。
一方的な恋愛感情でこの男にあたったのはよくないなと思いなおし、まな板と包丁をもって立ち上がる。
「アイスもあるけど食べる?それと水分補給」
「たべる~」
「結構元気そうだな」
「なんかリンゴ食べたら元気になってきた。
久しぶりにフルーツ食べたわ」
しっかり赤い顔をしながらへらへらと笑っている玉地の冷えピタが剥がれかけていたのを貼りなおして、アイスを取りにキッチンへ向かう。
ペットボトルとアイスを抱えて戻ると、壁に寄り掛かって玉地はうとうとしていた。
「寝る?寝るにしてもちょっと水分とろう」
「…んや、アイス食べる…」
「そ?」
じゃぁ、と言いながらアイスの蓋を開けて一口すくって、自分の口に含む。
「えぇ…おれのじゃないのぉ」
「毒見。はい、どーぞ」
うるうるとし始めた玉地にアイスを渡して、私はキッチンへ洗い物をしに戻った。
洗い物をしていると、ギッ…ギッと音を立てながら玉地がアイスのごみを持ってキッチンへ入ってきた。
ゴミ箱にアイスを捨てた後おもむろに背後からぎゅっと抱きしめてきた。
まだ全然体温が高くて、抱き着かれた背中が熱い。
「…人恋しくなるよね、病気のときって」
「そうなのよ~。それに、ふゆたろがいい子だなって思って。
いい嫁になるよ」
頭をぐりぐり撫でてくる玉地の手をそのままにお皿類を洗いきって、タオルで手を拭いた。
なんだか少し涙ぐみそうになった目を細めて、背筋を伸ばした。
「そらどーも。
歯磨いて、もう寝るよ」
「ん」




