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セフレもち男を好きになるということ  作者: 一華花
第一部 23歳のもやもやする初恋
31/56

仕事詰めはろくなことがない【2】


気まずそうな表情をした主任が私を見下ろし、言いにくそうに口を開いた。


「…卯月、余裕あるか?」


「………もしかして今の会話聞いちゃってました?」


「…おぅ、鹿野と話してるところからしっかり聞いちまったから、資料作成時間巻いてる状態ってのも知っちまった」


「…ひぃ」


新たな ”SHI GO TO” がふられる予感に小さく悲鳴を上げると、玉地が手を挙げた。


「俺いけますよ~

ガキはたくさん寝なきゃですから。

寝かせてやりやしょう」


いつもの眠たげな眼で、玉地はわざとらしく私ににやりと笑って見せた。


「ガキじゃないし」


「俺から見たら立派にガキやで」


「…じじい」


「!?な、なんてことを言うんだ…」

「とにかく!」


がーんと効果音のつきそうな顔をしている玉地から顔をそらして、主任に向き直る。


「やりますよ。主任の午前の会議内容きいてたので、なんとなく来るかもなとも思ってましたし、想定内ですからお気にせず!」


「すまんなぁ卯月。

代わりに石にもちゃんとアルハラやめろって注意しとくから」


「え!?おれすか!?」


「それは、ぜひともお願いします」


「ふゆちゃん!?」


私に売られた石は涙目になり、玉地は「お前が悪い」、と言いながら石の肩をぽんと叩いて励ましていた。


「ほんとすまん、あと少しの辛抱だから…」と私より死にそうな顔をした主任が去ったあと、今日は隣のデスクに座っていた玉地がコロコロと椅子を転がして近づいてきた。


「…ふゆたろ、ほんとにだいじょぶか?

俺まじでいけるよ?寝れるときに寝とき」


…顔が近い。


「平気。

帰りは遅いけど明日予定ないから寝れるしね」


「ふゆこさん、私もできることあったらやりますんで!全然ふってくださいね!」


前のデスクに座ってる鹿野ちゃんが右手を上げて声をかけてくれるのに、にこりと返す。


「ありがとぅ〜とりあえずやってみるよ!

やばかったら頼らせて〜」


「もちろんです!」


何か言いたげな玉地をしっしっと追い返し、PCを開く。  


さて。

残業は確定したが、さっさと終わらせられるなら終わらせるに越したことはない。


特に予定があるわけでもないが、今の情緒で石のペースで酒なんか飲まされた日には、何を口を滑らすか分かったもんじゃない。




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