職場でセフレをつくってしまったおばかさん[2]
「…はい」
フンフンと鼻歌混じりにスマホを見ている少し丸まった背中に声をかけ、玉地の前に紙コップを置く。
「お、なんだかんだ買ってきてくれるんだからぁ。
あざぁすぅ」
玉地は私の差し出したコーヒーに目を輝かせて、あざすと片手をあげた
そしてスマホを見ながらコーヒーを口に運ぶ玉地を横目に、私は席に座った。
あっつあつでも飲める玉地は香りを楽しむことなく、ノンストップで口に一気にコーヒーを流し込む。
ガタッ
「……にっがぁ」
「…ふ」
ジト目でこちらを見てくる玉地を鼻で笑って、pcを開いた。
ついでに自分用に買ったミルクたっぷりカフェオレを一口飲む。
「ひどい…」
「コーヒーっていったじゃん。
――コーヒーや」
「おれが甘いの好きって、知ってるくせに…」
「いやぁ?初知り〜」
眉を寄せて「はぁ…」とため息をつく玉地にスティックシュガー3本を見せながら手を差し出す。
「500円」
「カフェオレ買えるやん!」
「その価値がこの砂糖にはある」
「んなばかな」
スティックシュガーを目で追う玉地に笑いながらプラプラと揺らしていると、腰に片手をあてて私たちの後ろに仁王立ちした主任がため息をついた。
「おう、コントしとらんではよ朝礼入れアホ二人」
「あい」
「はい~」
朝からエナジードリンクを空けている上司に敬礼して、オンラインミーティングに入室した。
玉地は開いてすらいなかったpcを開きながら無意識にコーヒーをもう一口のみ、うえっとえずいていた。
日頃余裕そうなむかつく男へのちょっとした復讐である。