閑話:「…おはよ」
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朝。
くぅ…と安らかな寝息を立てる玉地にため息をついて、まじまじと顔を見つめる。
私より5歳上だから、28歳か。
にしては童顔だ。
丸めの顔に、今は閉じているぱっちり二重の目。
でもいつも眠たげで気だるそうな雰囲気。
背は高くはないから、威圧感もない。
口調も穏やかだから一見優し気。
実際優しい。
皆等しく、優しい。
…ほんと、みーんなに、同じくらい、優しい。
「…ひどいやつだな、君は」
私も、人に優しくできる人間だ。
優しい、親切だと言われることも多い。
だから、知っている。
分かりやすい優しさや親切は、無関心な相手にほど施しやすい。
私は特にあまのじゃくだから、自分の心を乱す相手ほど、優しくなんてできない。
私は、玉地に優しくなんて、できない。
君のやさしさは美徳だけど、その優しさが、どうしようもなく苦しくなる時がある。
君はきっと私に心乱されたことなんてないんだろうね。
ずっと優しい君だから、確信している。
「…ふぁ。
ん?もう起きてたんだ、ふゆたろ。」
寝ぼけ眼で無邪気に微笑んだ玉地は、私をぎゅぅと強く抱きしめた。
「おはよぉ」
「…おはよ」
あったかいけど、きゅっと締め付けられる。
あと何回、こんな朝を迎えられるだろうか。




