甘えてもいられない23歳【4】
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玉地は様子のおかしい私の話を聞き出すでもなく、ただ二人で並んでラーメンを食べて、食後の一服時に世間話をしただけだった。
玉地のそういう気遣いというか、優しさというか、無関心さは。
丁度よい距離感なのだろう。
でも、一部の人間には、物足りなさを感じさせるかもしれない。
その一部の人間は、きっともれなく玉地に多少なりとも惹かれている人間であることを、゛私は゛良く分かっている。
そこからさらに物足りなさを埋めようとするとハマるのが、深くてどうしようもない沼だ。
…私は、沼は、嫌いなはずだ。
想像するだけで、その沼のめんどくささに溜め息がでる。
「…はぁ。おつかれぇ」
「ふゆちゃんおかえりなさい〜
そして早速なんですがメールチェックおねがいします〜!」
「お、おう」
席に戻るとみなみちゃんが大量の書類を抱えて目を回しているところだった。
返事をしながらPCを開くと、自分メンションの依頼が山となっている。
「ど、どゆこと?」
「午前の会議で部長が新しい案件を引き受けたらしくて、怒涛のようにシステム調整依頼がきてるんです〜
既存のシステム調整と新規があってしかも短納期&運用保守もこのチームでまかなうらしく…ぁああ〜またメール来てるぅ!」
「…なんだその無茶ぶりは…」
pcを見ながら呆然と呟くと、エナジードリンクを両手に抱えた主任がぬっと背後から現れた。
「助っ人呼ぶから安心しろ、だとよ。
できるかぁ?卯月?」
「無理すぅ」
「俺もだ」
「とりあえずそれ私にもくれません?
というか七瀬さん禁止中では?」
「俺が禁止されたのはスタンダードのほうだから。
ほら、これはプレミア」
ほら、見せてきた缶には確かにプレミアとかいてある。
「それと、卯月たちの分は部長自らくださったぞ。差し入れだとよ」
主任の指さした先、書類に埋もれたプレミアエナジードリンクを見て、私は覚悟を決めた。
「ちなみにタクシー代は…」
「チケットも置いてってくれた。
流石部長。抜け目ないよなぁ」
主任の指差す先には、ご自由にどうぞのメモの元タクシーチケットが挟まっていた。




