甘えたい夜には【4】
「んで?
別れたん?」
とん、と灰皿に灰を落とした長崎は椅子の手すりに肘を乗せて、首をかしげた。
長崎が振る舞ってくれたイタリアンおつまみ系のお食事を存分に堪能したあと、私達は食後の一服をしにベランダへでていた。
ベランダに置いた椅子に腰掛ける長崎を、ベランダの縁に座り込んだ私は茶を飲みつつ体育座りで見上げる。
「いえす、まむ」
「ふぅん、おつかれ」
ご褒美、と言って長崎はカーディガンのポケットから季節限定のチロルチョコを3つ取り出した。
両手を差し出して遠慮なく受取り、さっそくカサカサと包みを開く。
ずんだストロベリー味とは…?
「泣いたん?」
「泣いたねぇ…」
「ふゆが泣く姿なんて私も見たことないわね」
「泣くの好きじゃないからねぇ…」
豆にはビールだよなぁと頭の片隅でぼやきながら、ぼんやりと長崎にこたえる。
「疲れたでしょ」
「すっっごく」
「すっきりした?」
「…すっっごく」
力を込めて頷きながら、ため息をつきつつ呟いた。
「ほんとに、とても、」
ため息を吐き尽くし、深く息を吸った。
「つっっっかれたぁ!」
「うるさい。苦情くる」
パタンと後ろに倒れ込んだ私の足を足で部屋に押し込み、長崎は部屋に入って窓を締めた。
「片付いたとこで、さっそく次行くの?」
「つぎ?」
「あんたの唯一無二のセフレ君よ」
「あぁ、玉地ね」
そういえば玉地から連絡入ってたなと思い出し、膝を抱えて丸まって、小さく呟いた。
「…要検討で」
「そんなモタモタしてていいのかしらねぇ」
「予想以上に体力と気力持ってかれたからね…」
「…あんたって恋愛自体向いてないんじゃ…」
長崎の恐ろしい言葉に耳をふさぎ、用意されていた布団に飛び込んだ。




