職場でセフレをつくってしまったおばかさん
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「おはようございまーす」
「はよー」
おっはー、おあよ~、ざーす
雑な挨拶が返ってくるが、平均年齢20代半ばの職場なんてこんなもんだ。
朝から景気の悪いぼそっとした返事しか返ってこない職場よりはマシだ。
一緒にオフィスに入った玉地がいつもの席に座ったので、その横の席に鞄をおろしながらスマホを取り出した。
「私コーヒーかってこよっと」
「あざっす」
「君のまで買ってくると誰が言った」
調子のよい玉地が片手であざっすというのを冷めた目で見降ろすと、あははと笑って、同僚の女の子が立ち上がった。
「そうですよマチさん。逆に奢ってくださいよ。」
「俺金ないもん」
「マチさん一昨日インスタ更新してたじゃん。
金ないは通用しないですよ~
ま、いいや。
ふゆちゃん、私もコーヒーいきますぅ」
「おん、いこいこ」
お洒落さんな同僚のみなみちゃんが、スマホを首から下げながら、デスクを回ってくる。
今日は紫のサマーニットか…。かわいいな。
この職場は高層ビルだが同じフロアにコンビニが入っているため、朝や休憩時にしょっちゅうコーヒーやらお菓子やらを買いに行く。
オフィスをでて廊下を歩いていると、みなみちゃんがふと聞いてきた。
「そいえば最近ふゆちゃんとマチさん出勤時間かぶること多いですねぇ」
「そーかい?最近早起きできるようになったからかなぁ」
内心ぎくりとしながら、表情には出さず、コンビニのアプリをだしてクーポンをチェックしているふりをする。
駅からオフィスの入っているビルまで一直線なこともあり、同僚と偶然合流して一緒にオフィスに入ることも多いから少し油断していた。
「え~!えらい!私なんて全然朝起きれなくて~」
「そりゃしょうがないよ。最近帰り遅いし、無理に起きなくてもいいっしょ。
私なんか年のせいかたまに目覚めちゃうだけだしね」
「やぁだ私より一個下のくせに何言ってるんですかぁ」
「みなみんは心が若いから」
他愛のない話題に戻ったことに安心しながら、無事コンビニに到着し、コーヒーをゲットした。
…よかった。
隠し事なんてしない生活を23年間おくってきたせいで、とっさに臨機応変な対応ができる自信はない。
動揺が行動に現れそうで、自分にハラハラする。
「あれ、ふゆちゃんブラックコーヒー派ですか?
おっとなぁ」
「…んやぁ」
……私は、カフェオレしか飲めない。
玉地の家から一緒に出てくるのやめよ…