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セフレもち男を好きになるということ  作者: 一華花
第一部 23歳のもやもやする初恋
15/56

ごめんね、未来をみてしまった【5】


「ふゆちゃんはやっぱりすごいな。

いつもなるほどって思う」


素直な葵くんはいつも真剣に私の話を聞いてくれて、考えていることも話してくれる。


でも根本的にはあまり私と葵くんは共感できなくて、結局私は同じような言動を繰り返してそのたび葵くんは自分を責めてしまう。


「…ううん、そんなことないよ。

まぁ外回りも多いだろうし、本当に体調には気をつけてね」


「うん。気をつける。

いつも心配してくれるふゆちゃんの存在が本当に嬉しいよ」


「…うーん?大袈裟だなぁ」


「ほんとに。いつも感謝してる」


目を伏せて、「…ありがとう」と口にしながら震えそうな唇を少し噛み締めた。


彼の、「ありがとう」とか「好き」とか、大切な言葉はどんなときでも相手の目を見て真剣な目で伝えるところに、その言葉への照れと、葵くんの人間性への尊敬の念をいつも感じていた。


…今、その目をまっすぐ見つめ返すことができないことが、また苦しい。


届いた紅茶に口をつける葵くんを確認して、話を変える。


「…お盆休みとか、何してたの?」


「そうだなぁ…あ、家族と箱根に小旅行いったね。」


「へぇ!いいねぇ。

どのへん回ったの?」


「芦ノ湖行って、大涌谷も行ってきたよ。

―あ、はい、これお土産。

危ない、忘れるとこだった。」


大きな紙箱を受け取り、私は眉を下げた。

あまり出かけない私は、よく出かける葵くんからもらいっぱなしだ。


いつか返さなきゃなと考えて、今日に至ってしまった。


「…え、ありがとう。

いつもありがとうね、私全然旅行とかいかないから返せなくて申し訳ない」


葵くんは首を振りながら答えた。


「全然いいよそんなこと。

ん~、あとはお盆はいつめんとちょっとドライブ行ったかな。

栃木で温泉はいったり、ぶらぶらしてたよ」


「そっかぁ、いいね、温泉。

私も癒されたいなぁ」


栃木にあまりイメージのない私は無難に返答してしまった。

そして、


「うん、結構よかったよ。

…栃木ならすぐだし、近々いく?」


「……んー、あー、ん」


さらりとでてくる未来の話に言葉が詰まった。


私を見つめる真っ直ぐな目から逃れられず、上手い返答が思いつかずパニックになっている脳内を必死に整理しようとぐるぐる思考がまわり、


そして、私の経験不足によるボキャブラリーが決壊して、止める間もなく唐突に、ボロボロと涙こぼれた。


「……ん?んぇ?!

ど、どうしたの、ふゆちゃん!」


―さいっあくだ。

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