第七話 嘘吐き
どんぐらい走ったんだろう。
「先生に嘘を吐かれた」「先生に嘘を吐かれた」「先生に嘘を吐かれた」「先生に嘘を吐かれた」
僕は裏切られたんだ。
先生は俺 僕なんか。僕なんか。
僕はずっと考えていた。そこには当分止まない雨が降っていた。
その頃華は。
流ちゃん。
もしかして話を聞いていた?
私は走りながら考えていた。
私は嘘をついた。あの時。だって、助けた理由なんてない。単純に助けたかったし、理由なんていらなかった。
「流ちゃん!」
流氷に追いついた。
「先生なんですか?」
流氷は足を止めた。
「どうせ俺に嘘をついて遊んでたんですよね。わかってますよ。」
「ちが…」
「先生、能力の副作用があるらしいですね。」
「聞いてたんだね。」
「…なんで相談してくれなかったんですか」
「心配させてなくかった。」
でも結局流ちゃんのためにはならなかった。
「…」
「私がさ、白夜団辞めた理由はこの能力の副作用に気づいたからなの。異様に疲れて、汗がかいて、妹にも相談した。けど妹と私が結論についたのが。」
「能力の副作用ってことですか。」
キツい目で流ちゃんがこっちを見ている。
「だから私は妹に後継ぎを任命し辞めた。」
「なら何故嘘を…弟さんは!」
「弟が事故であの世に行ったのは本当。あの子は私と妹がまだ幼い時に拾った子。私は拾う気にならなくてさ、妹が『お願いだから、私達の家で住まさせよう?』ってうるさくて。住まさせたけど妹の言う通りにしてなかったらまた目の前で人を失うんだろうなって思ったんだ。」
「なら何故俺を助けて…」
「理由なんていらなかった。助けたかった。だって前も言ったでしょ。目の前で人は失いたくないって。」
華は思っていることを全て話した。
…全て僕の勘違いだった。全て。なのに俺は逃げて勘違いして。
「先生、ごめん、なさい。俺勘違いして…」
「ううん。私もごめん。嘘ついて。」
「けど無理はしないでくださいね。」
「うん。わかったわ。」
僕と先生は雨と涙で濡れて仲直りしてた中。
突如、声が聞こえた。