十一話 遺言
僕は音のほうを見た。そこには僕の大切な人…そこには…僕の先生がいた。
「先…生?先生!」
「えへへ…げほっ…」
そこにはとても苦しそうだが、笑みを浮かべる華がいた。血を吐いてた。そして僕は分かってしまった。先生の灯[ひ]が消えてしまうと。
「先生…」
「まさか能力を使いすぎて死ぬことになるなんて…ちょっと恥ずかしいなぁー。」
なんでだろう、操ってもいないのに水が大量に溢れてくる。
「先生!そんなこと言わないで、生きてよ。僕を…一人にしないでよ…。」
あぁ、そうか。
「ごめんね流ちゃん。私だって流ちゃんを一人にしたくないよ。もっと流ちゃんのそばで成長を見守っていたかった。いつまでも…ずっと。」
これが永遠の悲しみか。
「っ…」
僕は唇を強く噛んだ。血が出てしまうほどに。悔しい…悔しい…!なんで助けられなかったんだよ。もっと僕が強ければ…
「流ちゃん…よく聞いてね。人ははいつか必ず死ぬ。」
「そんなこと言わないで。まだ生きててよ。」
「でもね。流ちゃん?あなたはもう十分強い。数年前とは違う。私が認めるほどだよ?白夜団元団長が認めたんだよ?これはすごいことなんだよ。流ちゃんなら絶対に人の役にたつことができる。」
そんなことない!僕は弱いんだ。目から涙があふれる。そして心からは悲しさがあふれる。
「先生ともっと一緒にいたかった…!先生と…もっと生きたかったっ…!」
「私もだよ、一緒にもっと出かけたいし、戦いたかった。けどもう…」
先生も涙を流している。
そうだ!
「白夜団には治療できる異能力者は居ないんですか!」
「いない。私がいた頃にはいない。妹がなってからはわからないんだ。」
「なんなんですかその団!」
なんで回復出来る人がいないんだ。
「そんな事言わないの。みんな辛い過去を生きてきた。だからこそ人の苦しみや悲しみを人一倍知っている。」
「っ…!」
僕と同じような人がたくさんいるなんて…
驚きが隠せなかった。
「うんうん。流ちゃんにはこの話してなかったね。先生として最後まで教えなきゃ。げほッ…」
「先生これ以上喋ったら…本当に死んじゃいます」
先生はさっきよりも大量な血を吐いた。もう本当に死が近い。嫌だ、別れたくない。憧れで大好きな人そして、僕にとっての居場所…僕にとって宝石よりも輝いている日々が…
「生き返らすことはできない。過去に戻ることもできない。でも死んでも私は…流ちゃんの記憶の中でずっと生きていける…。私はこれからも流ちゃんと共に歩んでいける。」
「…」
僕は悲し過ぎて言葉を発せなかった。
「流ちゃん、お願いごといいかな。」
「なんですか。」
「白夜団に入って私の代わりにグローリーを倒して欲しい、妹達と一緒に。私これでも結構恨んでるからさ。流ちゃんと居れる時間を減らされてるもん。だから私の仇を取ってきて。」
「っ!………わかりました。」
目標は決まった。奴らを…
「後一つ!私の部屋の机の中に手紙があると思う。それを私の妹に渡して。手渡しで。他の人に見られたくないの。」
「わかりました。」
最期の願い、聞きたくなかった。聞いて欲しかった。
「はぁ…この数十年間疲れた。けど流ちゃんとの生活は楽しかった。生まれてきてよかったって思えた。」
「…先生。」
「なに…?」
今言わなきゃ。きっと後悔する。勇気を出せ、僕!
「僕は…先生のこと大好きです。尊敬もしています。先生のことを心の底から愛してます。」
「…私もだよ流ちゃん。言葉に表せないぐらい愛してる。……流ちゃん…青い灯火を…消さないで…」
「あっ…あぁぁ……」
先生の目はどんどん閉じてきて。先生は最後に一言「大好きだよ」といい、満面の笑顔で星に帰った。
「どういう『好き』だったんだろう。でも良かった。両思いだったんだ。」
僕の涙は黄昏色の日に照らされていた。




