表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

婚約破棄

 海の底へ落ちる前に聞いた言葉はこうだった。


「婚約破棄だ、マルティナ!! お前の料理は激マズで食えたもんじゃなかった!! もういい、いっそ死んでくれッッ!!」


「……そ、そんな」


 絶望の中、わたしは海へ落ちた。

 悲しいことに泳げなかった。

 だから死んだと思った。


 でも、次に目を開けた時には知らない砂浜にいた。


 ……こ、ここはどこ。


 わたしは確か、婚約者のイングリッドに崖から突き落とされて……深い海へ落ちたはず。

 体を起き上がらせると、誰かが取り囲んできた。こ、この人達は?



「お嬢ちゃん、こんなところに流れ着くとは不運だねぇ」「こりゃあ美人だ。高く売れるぞ」「ああ、無傷なら数年遊べる額が入る」


 男三人組が不敵に笑い、わたしの腕を掴む。


「な、なにをするんですか……」

「なにをってお前を売り飛ばすのさ」

「それって……奴隷ってことですか」

「そうさ。この島は奴隷島とも言われている」


 鎖を付けられ、わたしはもう逃げられなくなった。……ひどい、どうして。どうしてこんなことに。

 婚約者に捨てられ、その先で奴隷にされるだなんて……こんなのって。


 島の奥へ向かうと、そこには奴隷にされている人間が数多くいた。


「こんなにいたんですね……」

「そうさ、お嬢ちゃん。けど、お前はその美貌に免じて特別待遇だ。この先に親方がいる。会って挨拶をするんだ」


 親方? この島のボスってことかな。

 心配になりながら、大きな建物の中へ。

 その奥へ向かうと王座みたいな場所に座る男性がいた。


「おや、これは珍しい奴隷だね」


 その人は金髪の青年だった。

 他の人とは明らかに違う整った容姿。

 まるで貴族みたいな男性だった。


「あ、あなた……貴族では」

「そうさ。俺はヴェルナー・ラムズフェルド。この奴隷島の親方だ」

「わ、わたしをどうする気ですか」

「そんなの決まっている。お前には料理スキルを与える」

「え……!?」

「この俺の舌を見事に満足させられたら解放してやらんでもない」


 突然の提案に、わたしは戸惑った。

 てっきり売り飛ばされるものかと思っていたけれど、これはチャンスだと思った。

 自身のどうしようもない料理スキルを磨きたいと考えていたから。

 あのイングリッドが嫉妬するくらい、腕を上げたい。


「分かりました。料理でもなんでもします」

「条件を飲むか。いいだろう、で、お前の名は?」

「わたしは、マルティナ。マルティナ・ファルケンホルストです」

「ファルケンホルスト? 聞いたことのない貴族だ」

「ウチは貧乏だったので」

「フン、まあいい。たった今、お前に料理スキルを付与した。精々がんばれ」


 さっそく厨房へ向かえと命令を受け、わたしは男達に連れられて向かった。


「奴隷13400番、それがお前の名だ」

「わ、わたしの名前……?」

「そうだ、奴隷13400番」


 うぅ、なんか慣れない。

 でも今はそんなことでもいい。

 料理の上でさえ上がるのなら。


 とりあえず……。

 監視されながら、料理を作らねばならないらしい。

 メニューは決まっていて、その通りに作ると。

 今日はボロネーゼを作れとあった。


 そ、そんな料理作ったことない。


「ど、どうすれば」

「お前には料理スキルがあるだろう。まずはなんでもいい、試してみろ」


 監視さんの言う通り、わたしは適当な材料を掻き集めて料理スキルを発動してみた。


 すると。



『ドオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』



 と、爆発してしまった。



「きゃあ!?」

「この馬鹿! 料理を爆発させてどうする!! というか、普通は爆発などせぬぞ!!」

「す、すみません……」


「まったく。いいか、材料は適当に集めればいいというものではない。作りたい料理をイメージし、必要なものだけを目の前に置くんだ」


「がんばります……」


 その後もわたしは何度も料理を爆発させた。

 わたしって、どうしてこうなの……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 見つけて読んでみました! 料理上手も多いヒロイン(主人公)のなか、ひさびさの爆発する子が登場で気になったので読んでみました。 どれだけ成長するか楽しみですね。 [気になる点] 突き落と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ