隣の家で響く音
隣の部屋から物音が聞こえる。
夜勤明けで眠ろうとした耳に重低音が響く。
何かやっているのだろうかと、重たい頭を動かしてみる。
(子どもが遊んでいるのかな)
真っ先に出てきた考えは真っ先に打ち消された。
(聞こえてくるのは重低音。子どもなら高い声のはず)
(なにかを作っている)
次に出てきた考えも音をよく聞いてみるとずれていた。
(DIYとかの工作ならドリルなりのこぎりなり音がするはず)
聞こえてくるのは重低音だけ、となると何だろう。
何かがひっかかる。
何度か深呼吸を繰り返して、脳に酸素を送った。
「そうか!ダイエット!」
冬から春に変わるこの季節、春物にそでを通すと気に割とよくある。
「そうと分かれば話は早いな。早速作戦を練ることにしよう」
やることを決め、机の引き出しを開けて耳栓を取り出す。
耳栓を耳に押し込み、ゆっくり休むことにした。
*
翌朝になり、俺は耳をそばだてる。
隣人は犬を飼っていて、そろそろ散歩に出かけるはず。
今日は可燃物の日でもあり、ごみ袋を持って玄関で待っていた。
「おはようございます。今日はいい天気ですね」
タイミングを合わせ、ジャージ姿で外に出て、隣人に挨拶をする。
ジャージは便利なものでパジャマにもごみ捨てにも使える。
この後、ジョギングに行く姿を見せれば体をより一層動かすだろう。
「おはようございます。いい天気ですね」
「こんな日は体を動かしたくなりますね。どうです?一緒に運動でも」
「そうですね。その前にやること終わらせますね」
隣人はそういうと懐からリモコンを取り出し、ボタンを押す。
その直後、隣人の家が変形をし始めた。
「実は私宇宙人ですの。ようやく宇宙船の修理が終わりまして」
隣人は犬を俺に預け、銀色の円盤に乗ってどこかに飛び立つ。
衝撃の展開にしばし呆然としていると、犬の鳴き声が耳に飛び込できた。
「事実は小説より奇なり、か……」
思い返せば犬の散歩なら体は十分に動かしているといえるだろう。
「しっかり考えるのはひと眠りした後だな」
散歩に行きたがる犬に導かれ、俺は朝のジョギングに出かけることにした。