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氷刀の嘆き  作者: 桜澤 那水咲
5/6

嘆き5

「空が割れてる。」


一瞬で曇り空になり、黒い雲達があっけにとられていると、二つに分かれ始める。

その瞬間に一瞬体が動かなくなり、全ての時が止まる。


「ダァァーーーーン!!」


次に起きたのは、まるで斬るような激しい音だった。

落ちた!!

いや、落とされたのだ。

まるで叩きつけるような音だった。

目を見開き、動く体は立ち上がる。


「森が…燃えてる。」


黒い炎、普通の燃え方じゃない。


「ミズハ!!」


料理をやめた母は飛び出て来た。


「お母さん!!森が!!」


驚いた母は歯を食いしばった顔になる。ルルを抱き上げ肩に乗せ、私の腕も掴んで引っ張る。


「逃げるよ。ここも燃やされる。」


「え!?どういうことなの!!」


訳が分からず、焦る母に問いかけるが、その声は届いてなかった。


「早く逃げないと!」


電気もつけっぱなしで、何も持たず山を下りようとしているのだ。


「荷物は?せめて準備してからーー」


「そんなことはどうでもいいわ。」


そのまま家を出て、暗い夜道を進む。追いつかない私は、腕を引っ張られたままだ。


「ちょっと待って、ちゃんと理由をーーキャッ!!」


母の手を振り払ったときだ。頭上から大量の土が降ってきた。

土砂崩れだ。その後の記憶は覚えていない。

気づいた時には、母とルルとは離れ離れになっていた。


「グハァッ!グハァッーー 」


土からなんとか這い上がった私は奇跡的に生きていた。

そこから立ち上がり、辺りを見渡す。


「お母さんー!!ルルー!!お母さんーー!!」


呼びかけても反応もない。

姿も見えない。

私はただ焦った。

すでに日が暮れ、真っ暗だ。

四方八方頭を動かし、周辺を見る。


誰かーー、誰かーー


見回すと、森の向こうに小さな灯りが見えた。

山の麓の村だ。

ここまで流されたのか。

なら村の人に助けを求めないと。


私は土で汚れた体を動かし、無我夢中で光の方に向かう。痛む体では距離がなくても、時間が掛かった。


「やっと辿り着いた。」


これで安心できると思った矢先、私は立ち止まった。

村は荒らされ、そこら中に物や火が転がっていた。そして、家や地面に血が飛び散っていた。


「ギャァーー、やめて!!殺さないで、ゔっー」


女の人の悲鳴、恐れた声、飛び散る血、刃物に斬られたような音、息のない体。


殺されたのだ。1人だけじゃない、他の村人もだっだ。

なぜ?誰に?天災ではなかったのか?

これは明らかに殺人事件だった。


「うん?誰かいるのか?」


危機を感じた私は、とっさに森に隠れた。

息をひそめながら、口を手で押さえる。

近くから足跡がする。


(ばれるな、ばれるなーー、お願い!!)


ぎゅと目を瞑ると足音は止んだ。

私は震えながらも、目をそっと開いて、視線だけ横にそらす。ギリギリ姿が見えた。

違う方向を見てる。こちらには気づいてない。


だがその姿をまじまじと見た時,私は驚いた。

初めて見る赤色の髪、人間離れした尖った耳、鷲のような鼻先の仮面、白すぎる肌、見たことのない白地に模様の入った袴の様な服、腰にかかった刀。



何か違う。人間?いや違う。人の形はしているが、そうでないことは見てわかった。


「臭う。」


「!!」


「どうした?」


複数いるのか、もう1人他の仲間もこちらに来た。


「いやぁ〜なんか変な臭いがするんだよ。」


「臭い?もう人間なら沢山殺しただろう?そりゃ臭うさ。」


怪しむ1人がコツコツと靴を鳴らす。


「いや、人間の臭いじゃない。もっと嫌な臭いだ。人間のような、そうじゃないような。…そんな…」


「半端な臭いだ。」


その鋭い視線が、一瞬で私と目が重なった。


「みぃ〜つけた。」


「!!」



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