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あの世とこの世の境目はブラック企業も真っ青でした

作者: 志藤るぅ
掲載日:2022/10/04

かれこれ2年前に見た夢の話をそのまま書いて、存在忘れていたお話です。

「ここは……?」


目の前に広がるのは、真っ白で綺麗なロビー。

空港のような造りで、たくさんの人が行き交っている。

どうやってここに来たのか全く覚えていない。

普通に布団に入って寝たはずなのに。

気づけばこの場所に立っており、目の前にはキャビンアテンダントのような制服を来た女性がいたのだ。


「おめでとうございます。あなたはあの世への道案内人に選ばれました」

「は?」


思わず呆けた声が出たのは仕方ない。

あの世への道案内人?

何、この人。

キリッとした仕事できるオーラ漂わせてるのに、実はちょっと頭がヤバい人?


「違います。ここはあの世とこの世の境目で、私は亡くなった仏様の道案内をしている者です」


よし、夢だな。

さらっと内心読まれたけど、夢だからしょうがないよね。


「確かにあなたにとっては夢の中です。あなた、仕事探していましたよね?」


「さらーっと肯定しますね。確かに求人サイトは見ていたけども!」


そりゃ、寝る前に何となく求人サイト見てたよ。

今は専業主婦だけど、子どもの教育費のこと考えると少しでも稼がないとなーって思っていましたよ。

だから、近くにどんなお仕事あるかなーとから見ていましたよ。

でもですね?

ただいま二人目妊娠中なので、すぐには働けませんて!

というか、一人目だってまだ小さいのにあの世とこの世の境目でなんて働けるか!


「それは安心してください。あなたが生きている間は、寝ている間に夢の中で研修生として働いてもらうので」


「いや、現実でも家事育児でヘトヘトなのに、夢の中でまで働かせる気ですか!?」


休める時間、全くなくない!?

しかも夢の中で働いても現実にお給料ないし!


「大丈夫です。あなたが亡くなった後は残された家族に大金が舞い込む幸運が訪れます」


「いや、教育費とかのために稼ぎたいって言ってるのに、人生大往生した後に舞い込まれても。というか、自分自身に使えないって嫌がらせでしかないし!」


生きている間も夢の中で働かされるのに、お給料が入るのは自分が死んだ後ってやってられるかー!!

子どものためにお金稼ぎたいのも本音だけも、自分のためにも使いたいって気持ちはあるんだからなー!?


「いいじゃないですか。ここでは食事も睡眠も必要ありませんから、お金なんていらないんですから」


いやいや、食事も睡眠も必要ないからってそんな……いや、待って?


「ちょっとお聞きしますけど、休憩とか、休日って概念あります?」


「必要ありません。死んだ後のことなんですから、疲労が溜まることはないですから」


はい、ブラック企業も真っ青な真っ黒職場に、決定ー!

ヤバいよ、休憩も休日もなく働けって普通に言っちゃってるのがもうヤバすぎだよ!


「別におかしいことではありませんよ?先輩方も、道案内になってから1日も休んでいませんし、これからも休む予定なんてありません」


「そこに疑問持ちましょうよ!?というか、その先輩って何年働いているんですかー!休ませてあげましょうよ!」


「先輩はたしか三千年くらい数えてからはもう数えていないそうです。ちなみに、私は道案内人になってから459年になります」


「……ちなみに、雇用期間終了するのは、いつなんですか?」


三千年以上とか言っているので嫌な予感しかないけど、好奇心には勝てない。

聞くの怖いけど。


「雇用期間終了?そんなのはありません。道案内人になったら、永久に辞められません」


「……」


労基ー!!

誰か、労基に報告してー!!

ブラックすぎて、もうヤバいしか言えないよ!?

しかも従業員は洗脳済みで疑問にも思ってないとか!!


「道案内人のお仕事、お断りします」


「あ、言い忘れていました。あなたに拒否権はありません」


「何でだよ!?生きている間も夢の中でタダ働きさせられて、死んだ後は休みなしで文字通りの永久就職なんかやってられるかー!!」


「500年に一人は最低選ばれるので、諦めてください。道案内人って、とても名誉な仕事なんですよ?」


いや、それ絶対思い込まされてるだけだよ。

死んだ後に名誉も糞もないよ。

何で拒否権も何もないの、意味分からん。

早くこの夢覚めてー!


「はいはい、では業務の説明をしますから、駄々こねてないでくださいねー」


この人、段々自分の扱いが雑になってきてる気がする。

というか、こんだけ拒否ってるのに業務の説明て……。

嫌だ、もう泣きたい。


「はい、じゃあ説明します。亡くなった仏様方は、皆さんこのロビーに集まりますので、窓口でその人のお名前を聞いて案内してださい。仏様の姿は亡くなった時の精神年齢が反映されているため、歳で動けなくなったという人もいません。自分で動いてもらってください」


「いや、説明簡潔過ぎるし、何より私は働くなんて一言も言ってない!」


「だいたい徳の高い方、普通の方、低い方で別れているので。お名前をパソコンに入力したらどの行き先か出ますので。同姓同名の場合は指紋認証したら問題ないので」


「スルー!?そして意外とハイテク!?いや、このロビーでもそう思ったけど!」


「現実世界に合わせないと、仏様が自分から動いてくれないので仕方ありません。古い形式だと、まず仏様は建物内に入ってもくれませんし、古くさい格好だとこちらが案内しようとしても逃げられますし」


ちょっと涙目の女の人。

……きっと、今まで逃げられまくったんだな。


「ちなみに、道案内人は古い人間なのでパソコンとか使いなれてないので、早く正規の道案内人になってください」


今なんかさらっとさっさと死ね宣言された!?

もうやだー!

早く夢覚めてってばー!


「徳の高い方はあちらの飛行機乗り場に、普通の方はそちらの船着き場のフェリーに案内してくださいね。あ、低い方は端っこにある手漕ぎボートで」


徳の低い人の扱いが雑っ!?

というか、あの海かと思ったのはもしかして三途の川かい!?


「徳を積めば積むほど早く転生できるのは当たり前じゃないですか。徳が低いということは犯罪を犯した人間のクズですし、川を越えれずに転覆して二度と転生できずに延々と苦しんでも仕方ありません。案内するときに大抵イラっとさせられますし、案内ついでに船に穴を開けても怒られませんからお勧めします」


いや、勧めるなよ。

きっとイライラさせられまくったんだろうけど、だからって軽く勧めるな。


「あ、たまにまだ生きてるのにうっかりここに足を踏み入れる人もいるので、その場合はパソコンに表示されません。もしもうっかり生者が紛れ込んだら、あちらにある駅から現世に戻る電車が出ていますので、そちらに案内してくださいね。仏様には見えてませんが、生きていれば電車も見えますので」


マジか。

じゃああっちの電車に乗ったらこの夢覚めるかな。


「あなたの場合はこちらが呼んだので、引き継ぎが終わるまで帰れませんので、夢も覚めません」


「チッ……」


「あなたも段々慣れてきているようで何よりです」


「というか、何で私?こんな漆黒企業に強制入社って、私って徳低いの?」


「いえ?別にあなたは高くも低くもない普通です」


「普通かいっ!?」


こんな嫌がらせの強制入社って言うから、徳低いのかと思ったわ!

つーか、普通なら何で私なんよ!?


「あなたは普通ですが、あなたの母方ってお寺や神社と無縁なのに何百年も大事に仏像を奉っているじゃないですか。それが評価されたので、その一族から選ばれました」


ご先祖ー!!

ご先祖があの仏像を大事にしたら子孫が豊かになるって信じてたらしいのは知ってるけど、それって私という人柱があっての幸運が舞い込む形だぞー!!

可愛い子孫が死んでからも永久に働かされてもいいのかー!!

というか、私もう嫁いでるのにー!!


「男尊女卑時代に選ばれた過去の案内人って威圧的な男性が多いんですよね。でも今の現世からすると案内人は物腰柔らかな女性の方がいいと思われているんでよね」


「言っちゃなんですが、私は物腰柔らかとは無縁だと思いますけど?」


「そうなんですが、あなたの一族って女性が少ないじゃないですか。あなたのより下の年代では死ぬの待ってる間に500年過ぎちゃいますし。それなのに他の女性は徳が高すぎて案内人になんてさせられませんし……あなたで妥協ですね」


「はっきり言うな、おい!娘や姪っ子らが外れてて安心したけど!母さんやおばちゃんらが徳高いってのは何となく分かるけども!」


「あなたも今後徳が高くなる可能性はありますが、普通の間に研修生にしてしまえば問題ありませんし」


「私にゃ問題しかないわ!」


「はいはい、文句言ってないで早くあっちの案内所で働いてくださいねー」


「やってられるかー!!」


「あ、ちょっと!?」


マジで人の話を聞く気0の人の言うことなんて、こっちも聞く必要なんてない!

走って逃げるが勝ち!

夢で良かった!

現実だったらお腹そこそこ大きくなってるから走れなかったし!

呼ばれたから電車じゃ帰れないって言われたけど、試してもいいよね。

というか、今のとこそれしか方法思いつかんし。


「……ん?」


案内所に向けて歩いている人やぼーっと立ち尽くしてる人らの間を走っていたのだけど、思わず立ち止まった。

いやだって、めっちゃ知ってる人がおってんもん。


「……おばちゃん?」


さっきの案内人さんに徳が高すぎるって言われてた伯母が、戸惑ったように立ってました。

自分の記憶よりもちょっと若い気がするけど、最初の方で精神年齢が反映されるって言ってたから、こんなもんか?

いや、それよか嘘やろ?


「おばちゃん!何でこんなとこいるん!?」


「あらー、よかったわー。おばちゃん、何か気がついたら知らんとこおって、ちょっと不安やったんよー。寝てたらトイレに行きたくなって起きたはずやのにねぇ」


のほほんと笑っているけども……それってヒートショック起こしたんじゃないの……?

ちょっと待ってちょっと待って!

確かにおばちゃんはもう70過ぎてるけど、まだ早い!


「おばちゃん、こっち来て!」


「んー??そっち、壁しかないけどねぇ……」


死んでる人には見えない駅、おばちゃん見えてないん……?

手を引っ張ったらどうやろ……


「おばちゃん。目つむって、私の手離さんといてね?」


「ん?ええよー」


ほんま、おばちゃんいい人すぎる。

こんな変な状況で、普通ならいくら姪とはいえ警戒してもおかしくないのに。

まぁ、おばちゃんを誘導する私としては楽やねんけど。


「よっしゃ、電車乗っけれた!」


「んー?ありゃ、いつの間に電車あったんやろか?」


「気にせんでいいから。とりあえず、おばちゃんはこのまま電車乗っといて?私は戻らなあかんから」


向こうが呼んだから、私は電車乗っても戻れん言ってたから他の方法考えないと。


「ん?そーか。ほなら、また娘ちゃんに会わせてなー。あと、妊婦さんやねんから、無理せんようになー」


おばちゃんののほほんとした言葉に頷きつつ、電車が出発するのをお見送り。

ほんま、無事に戻れますように。


なーんて思っていましたら。


「何しとんじゃ、おのれは……」


背後から恐ろしく低い声が響きました。

ついでに体が金縛りにあったかのように動きません。

とにかく、後ろに何かいるのは分かるんですけど、それ以外はマジで不明。

冷や汗かいてるのかも分からないほど、とにかく恐い。

そう思っていると、視界にあの女の人が走ってくるのが見えた。


「あ、見つけました!って、補佐様!?」


自分の後ろに視線を向けて、驚く女性。

この人の様子に、背後にいるのはとりあえず偉い人ってのは分かった。


「おぬし……このたわけに、何と説明した。よりにもよって、死者を現世に戻しおったぞ」


「はい!?」


古くさい話し方ですごく威圧的に響く声。

そういや、昔に選ばれた人って男尊女卑の時代に選ばれたから無駄に威圧的とか言っていたなー……


体が全く動かないうえに後ろからの恐ろしくて仕方ない気配に、一瞬現実逃避するのも仕方がないと思う。


「死者を現世にって、何てことしているんですか!?たまにロビーで転んで駅の中に入って現世に戻っちゃう方もいますが、案内人が自ら戻すなんて!」


いや、うっかり転んで現世に戻れる人いるんかい。

臨死体験とかそういうのか??


「呑気にどうでもいいこと考えないで下さい!補佐様にバレちゃいましたし、あなた、案内人になれませんよ!?」


「それはむしろありがたいです」


「きー!何て罰当たりな!」


後ろの存在が怖すぎるので一切振り向かずに女性の方しか見てないけども、こっちはこっちで顔真っ赤にして怒りまくってます。

なんか、どっちもヤバい状態でしかないな……


「そこのたわけ。おぬしは自分の感情優先で動くゆえ、案内人には向かん」


やだ、案内人失格の烙印おされちゃった、ラッキー!

怖い声だけど!

何か見たら絶対後悔しそうだから、足元しか視線やらないけど!


「しかし、死者を現世に戻したことには罰を与える。罰として、お主の家系を守っていた神を一柱、取り上げる」


いや、神一柱ってことはうちの母さんの家系って他にも守護神様的なのいたんですか。

あ、そういや仏像以外に白蛇様とよくわからん神様の祠が広い敷地内にたくさんあって祀ってたなー。

小さい頃はばぁちゃん家に泊まるたびに朝と夕方に全部に手を合わせに行ってたし。

普通の人ってそんなに神様憑いてるもんか?

憑いてないなら、別に大丈夫かな?

今まで守ってくれていた神様には悪いけど。


「……もうよい、この者はさっさと戻せ」


あれ、何か怖い存在の人にすごく呆れられた気がする。

むしろ、最初に比べて覇気が少なくなったような……あ、余計なこと考えるの止めとこ。

読まれる。


「せっかく新しい人が見つかったと思ったのに……もう、さっさと戻っちゃってください!」


涙目になった女性に叫ばれたのと、顔面に衝撃を感じたのを最後に、自分の視界は真っ暗になった。










「…………」


はい、顔面に衝撃来たから何だと思ったら、もうすぐ2歳になる娘の踵落としを食らった模様。

とりあえず、あんな漆黒企業に強制入社させられるのが夢で良かった…………。










〜後日談〜


その後、母から聞いた話


母「この間な、おばちゃんがトイレ入ってから全然出てこないからおっちゃんがドア無理やり開けてみたら、トイレで倒れてたんやって。見つけたのが早かったから、ちょっと片手に後遺症が残ったみたいやけど、もう元気に退院できてよかったわー」


自分「ほー……」


母「そういや、田舎のおっちゃん(母の兄)が突然白蛇さんの祠周りの竹藪とか樹が、全部枯れたらしいわー」


自分「へー……」


母「お母さんが小さい頃からあの周辺、枯れたことなんて全然なかったのに、一度に枯れるから慌てて植木屋さん呼んだらしいけど、原因分からんらしいわー」


とりあえず、母と母の実家の人達に変な夢の話をするのは絶対に止めとこうと思いました……

ほんまに夢やったのよね……?

ちなみに、おばちゃんのことは夢を見てから数日後、樹や竹林が枯れたのは先日久しぶりに母方の実家に行った時に聞きました。

枯れ始めたのがちょうど下の子を出産前ぐらいの時期と言われて、ふと夢を思い出して確認がてら下書き保存してた物を読みました。


……白蛇様が居なくなったのは、自分のせいじゃないことを祈ります。

ちなみに、おばちゃんは今も元気にやっています。

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― 新着の感想 ―
[一言] ……えっ、実話!!? 最後まで読んでびっくりです。本当にこんなことあるのですね。 志藤さんのお蔭でおばさまが助かったのですね。本当によかったです。 軽快なテンポで楽しく読ませて頂きました。 …
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