表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

花すには言ノ葉が足りなかった

作者: 豆々駄

愛を食べさせて

噛み砕いたものを口移しで

唇が触れた熱で

僕はようやくそれが愛だと分かるようだから







いいよ、許してあげる。

でも1週間だけ僕に付き合って。


毎日、一輪。

色も種類も違う花を僕のところに持ってきて。

意味はないよ。これはただのケジメ。

よく分からない?そうだろうね。

だって僕が何で怒ってるか分からないのに謝るくらいだし。


許すから、お願い。

1週間だけ僕に償って。




1日目。白のキブシ。

なんでこれを選んだの?

「運命を感じて」

格好つけながらアンタは答えた。

そうだね、アンタはそういう奴だ。


2日目。桃のデイジー。

なんだかね、これだから僕は怒ったのに。

アンタは不思議そうに小首を傾げた。

やだな、文句を言うつもりはなかったのに。

少しくらい困ってよ。


3日目。赤のニチニチソウ。

アンタから貰った花を僕は土に埋めていた。

何でそんなことをと尋ねられて僕はつっけんどんに返した。

赤は少し眩しいから。


4日目。青のイヌサフラン。

よくこんなの知ってたね。

「名前は知らなかったが」

そっか。よくこれを見つけられたね。

何で見つけちゃったんだろうな。


5日目。緑の実をしたヒヨドリジョウゴ。

これが運命かと僕が驚けば。

厨二くさいと珍しくアンタが顔をしかめた。

ほら、見てごらんよ。こんなに鮮やかなのに。

土色に染まったなとアンタは簡単に言い放った。


6日目。紫のヒヤシンス。

思わず笑いがこみ上げた。

楽しげに笑う僕にアンタは何故か顔を歪ませた。

まるで申し訳なさそうにしているかのように。

やめてよ、僕は今最高に幸せだよ。

笑いすぎて涙が溢れた。


7日目。黒のチューリップ。

悪かったな。こんな僕に付き合せて。

おかげでこんなにも晴れやかな気分になれたよ。

それがアンタの想いなら、いや、何も言ってないって、だってアンタが持ってきた花を見ろよ。あ、待って。やっぱりなんでもない。

もうさ、終わりにしよ。全部。

違う違う。今回の騒動のこと。

ね?もうさ、なかったことにしよう。




“出会い”

“平和”

“若い友情”

“悔いなき青春”

“すれ違い”

“ごめんなさい”

“私を忘れて”




僕は花を埋めた土の上に寝転がって、買ってきた彼岸花を口元に寄せた。


また会う日を楽しみに


花言葉を気にする馬鹿がここにいるんだよ。


彼岸花には毒がある。

今回は無理みたいだから、来世にでも賭けてみようか。

純粋なアンタに何度泣かされたことか。

けれど、出会える自信だけはあるからさ。



僕は彼岸花は口に入れた。

苦くて、甘い。

まるで口付けの後のような台詞だななんて思いながら、ゆっくりと微睡みの中に堕ちていった。







冷たくなっていくお前を前に、俺は跪く。




ヒヨドリジョウゴが赤く身付く。

ようやく“真実”を語り出す。

ヒヤシンスが言うには“悲しみを超えた愛”。

チューリップが泣きながら。

本来は黄色の姿だった。俺は紫になりたかった。けれどお前を想えば体が黒に染まっていた。


黄色が語るのは“報われぬ恋”

紫が語れるのは“不滅の愛”


だってお前は男で、そしてかけがいのない弟だった。




噛み砕かれなかった愛は行き場を失い、冷たく冷たく死んでいった。

くどいほどの花言葉に埋もれて死にたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ