コント『配達員』
場所……住人の玄関前
役……配達員=ボケ 住人=ツッコミ
住人「くそー、もうそろそろ荷物が届きそうなんだけど、腹いてぇなぁ。まぁトイレは玄関の横だし、きたらわかるだろう」
トイレに入ると配達員が来る
配達員「えーっと……あ、ここか」
住人「あっやべ、来たみたいだ。タイミングわりーなぁ」
配達員「んふん! アーアー……ピンポーン♪」
住人「いや、チャイム押せよ!! 自分の声で言ってんじゃねーよ!」
配達員「あれ? いないみたいだな?」
住人「待て待て待て待て、聞こえてんだろうが!!」
配達員「なんだ!? 脳内に人の声が?」
住人「ファンタジーか!! ここにいるわ!!」
配達員「あっ、すいません。お荷物お届けに参りました」
住人「あー、ごめんなさい。今お腹痛くてトイレに入ってるから、ちょっと待ってもらっていいですか?」
配達員「あはは、わかりました。だから臭かったんですね」
住人「失礼な奴だなてめえ!! まぁいいよ待ってくれるんなら……うっ、大声出したらまた腹痛くなってきた」
ぷっ
配達員「ド」
ぷっ
配達員「レ」
ぶりゅ
配達員「あは、今『ミ』が出ましたね!!」
住人「うるせえな! ちょっと黙ってろ!!」
配達員「あ、ぼくこう見えて実は絶対音感あるんですよー」
住人「聞いてねーよ!! ……くそ、なんか変な配達員がきたな……」
配達員「そういえば僕、最近この仕事始めたばっかりなんですよ」
住人「よくこの状況下で喋り掛けられんな……メンタル鋼かよ」
配達員「ミュージシャンに憧れて上京し、ライブチケットも売れず、生活費を稼ぐ為のティッシュ配りのバイトの日々……そんな生活の中、優しく接してくれたのが先輩の配達員さんだったんです」
住人「まぁ、苦労の中の他人の優しさってのは俺も経験あるよ」
配達員「心が荒んでいた僕はその優しさに触れ、人って優しい……もっと頑張ろう、と心の底から思ったんです」
住人「おぉ、いい話じゃねぇか」
配達員「だからこっそりその配達員の後をつけて、職場に乗り込んで『お金ください』って言ったら働かせてもらえるようになったんです」
住人「ただのクズじゃねぇか!! こんな奴採用するなんて会社の懐深いな、尊敬するわ!」
配達員「ところで僕は、いつになったらミュージシャンになれるんですかね?」
住人「知らねえよ!! 話吹っ飛び過ぎだろうがよ! 自分で努力して勝手になれや!!」
住人「……くそっ、こんなんじゃおちおちトイレもできねえよ」
紙を取ろうとする。
住人「あっ、やべぇトイレットペーパー切れてるわ……配達の兄ちゃん持ってねぇかな?」
窓を軽く開けて、コンコンと叩く。
住人「なぁ! おい! 配達の兄ちゃん!! 紙持ってねえか?」
配達員「え? ありますよ」
住人「おお! よかった! それくれよ!」
配達員「わかりました。じゃあ、これどうぞ」
窓の隙間から紙を渡す
住人「伝票じゃねぇかよ!! これで尻ふけねぇだろ!! ペンまで渡しやがって!! ったく、もうついでにサインするわ……はい」
伝票をわたす。
配達員「ありあざーす」
住人「なんだそのダルそうな返事は……もういいや。あのな、ティッシュだよ!! ティッシュ!! ケツ拭きたいの!! 持ってないの!?」
配達員「あぁ、ありますよ。ちゃんと言ってくれればいいのに……はい、どうぞ」
隙間からそっとポケットティッシュを渡す
住人「この状況で伝票渡してくるお前の度胸がすげぇわ……いや、でも助かったわ」
配達員「あはは、これが紙対応ってやつですかね?」
住人「誰が上手いこと言えっつったんだよ! 全然うまくねぇからな!! ……ったく、とんでもねえ配達員だぜ……早く荷物受け取って帰って貰おう」
トイレ流して玄関を開ける
住人「おう、待たせて悪かったな」
配達員「いえいえ、じゃあこれです」
住人「あれ? 思ってたのと違うぞ?」
配達員「それ、僕のライブチケット1000枚です」
住人「んなもんいるかぁ!! もういいよ!!」
住人・配達員「「ありがとうございました」」