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空を見上げて

アップした後に、かなり不足している部分があると気付き、加筆致しました。


改めて読んで頂けると幸いです!

 暫く銀杏通りを楽しんでいると~少し風が出てきたようだ。やはり秋も終わりが近付いているのであろう。謂われなく寂しさを感じた。

その時ふと、、何故だろう?急に暖かい紅茶が飲みたくなった。辺りを見回すと少し先にオープンテラスの付いたカフェが見える。私はまるで誰かに引き寄せられる様にそこへ向かった。


 テラスを通り抜け店内へ入ろうと、入口のドアに触った瞬間、、中から息を吞む程の『悲しみ』が伝わってきた。そしてそれは何かの影が段々に消えていく様な果かなさを伴っている。

カフェの中は茶色とベージュで統一されていて、普通ならとても落ち着く筈だが、今はそれどころではない。私は奥から伝わってくる大きな『悲しみ』が気に掛かり、急ぎ足でそこを目指す。そして引き込まられるように一番奥の席へ。するとそこには一人の女性が座っていた。

 私が近付くとその人は顔を上げた。

「あっ、」

「あなたは、」

同時に声を発する。その女性は、先程道で肩がぶつかった、あの人であった。

「良かったらご一緒にいかが?」

「よろしいんですか?それではお言葉に甘えて、、ありがとうございます。」

普通であればこんな風に勧められる事も、それを受け入れる事も無いのであろうが、、私にはそうなる予感があったのだ。

私は軽く頭を下げながら向かいの席に座る。彼女の明るい笑顔とは裏腹に、心の中から溢れんばかりの『悲しみ』を感じながら。


彼女と同じミルクティを注文すると、改めて彼女の顔を見入った。透けるように白い肌、奥に見える果かなさはもしかしたら、、。


「あなたとは出会える運命だったのね。」彼女はそう言ってまた微笑む。

「あの、いきなりこんなこと言うのは、ちょっと変だと思われると思うんですが、、」と私が話を始めると彼女はそれを押し留める様にして、

「いいのよ、あなたには分かるのね、私の事、、そうでしょう?だからお互いに引き合ったんだわ、そうよね?」っと逆に聞かれてしまった。

「どうして、、?」


「私もね、あなたと似た特殊な力があるのよ!『共感覚』といって相手と同じ気持ちを共有出来るの。だから多分あなたが此処に来るって、、何となくだけど思ってたわ。と言ってもあなた程、相手の心の中は分からないけれどね。」

彼女はそう言って薄く笑う。

「えっ、そうなんですか?私はあなたの『悲しみ』があまりに強いのでそれがとても気掛かりで、、。」

「ありがとう、やはり伝わったのね、そう、じゃぁ私の力を、、。」

そう言うと彼女は下を向いた。ほんの少しそうしていて、、顔を上げた時には、全ての迷いが吹っ切れたかの様にすっきりして見えた。

「そう、あなたの想像の通り、私の命は既に消えかかっている、、勿論悲しいわ。でもね、私の『共感覚』これは、例え私が死んでも、あなたに受け継いでもらう事が出来るの。だから今日はそのための日なんだわ。」

「それって、、一体どういう事ですか?」



 ここで初めて私達はお互いの名を名乗り、今までの人生について話した。


彼女は、生まれた時から全ての『感覚』が鋭かった。しかし今の様な『共感覚』は彼女の祖母から譲り受けた物だと云う。元々備わっている能力は自分の為にあるけれど、人から譲られた能力は、自分以外の他の誰かのために使わなければならないと云う。


「私もね、あなたの様にずっと孤独だけがお友達だったのよ。いつもひとりでとっても辛かったわ。でも、母方の祖父母様が亡くなる時、この『共感覚』能力を頂いて、そう、、【ギフト】を授かったの!

そうしたらとっても不思議、それまでの私とはまるで別人!心の中に私を支えてくれる祖父母様がいるみたいで、、。


あなたも私と同じ様に今までずっと苦しみながら生きてきたのね?、でも今日からあなたは変わるの、変わるのよ!過去に疎んじてきた、その特殊能力は本当は天から頂いた【ギフト】なの。そしてこれからは本来の力に合わせ、そこに私の『共感覚』が加わって、あなたは今、新しいあなたになるのよ!分かった?そうしてこれらを生かして、これから出会う誰かを幸せするために使うのよ。そしてそうする事が、あなた自身を救い、孤独の中から抜け出せる。そうしてあなたも幸せになれる。私もそうして生きてきたの。そして私は自分の役目を終えてあなたにバトンタッチ、これからはあなたの中に私がいる!」

 そう言い切った和音さんの表情は、とても穏やかで柔らかな微笑みに包まれていた。


 「手を出して、いい?ちゃんと受け取ってね!」

和音さんは私の両手を握り目を瞑った。だんだんと手が熱くなる。そしてその中に光が集められた。『あっ、光の中に小さな透明の玉が沢山、、。』するとその一つ一つが栞の手から全身に広がり、体と同化していくのを感じた。『私の中に何か別のものが生まれた、、もう私は決してひとりではないのね!』

 私は少なからず衝撃を受けた。けれどそれがとても心地好い物であるのも事実であった。だから意外にも、それをすんなりと受け止められる自分がいた。

と言っても、この力をどんな風に使っていけば良いのだろう?

「私に出来るかしら?少し不安だわ、、そして私は何をすればよいのかしら?」

「それは自分で考えてね!」そう言うと和音さんは軽くウィンクをした。


 その後私達は他愛のない話を交わし、そして、二人の心が完全に同調したのを感じた。すると和音さんは「来年は空から声を掛けるわ。」そう言って去っていった。



  私はその日から、、今までの事が嘘の様に心が軽くなり、孤独とも別れた。そしてやっと自分も幸せに生きていけるのだと信じる事が出来た。


 それからの私は本気で私が出会う誰かを幸せにしたいと、、その為には何をすれば良いのか?色々な事を沢山学んだ。そしてやっと「タロットカード」に出逢い、その術が分かった。カードと一緒に、きっと縁が結び付けてくれるであろう~誰かの何かを助け、幸せに導く事が自分の役目なんだと確信した。



 今年も風が和音さんの声を運んできてくれる。今それを感じながら歩いている。

 空を仰ぐと~~彼女が微笑んでいる。


「また来年来ますね!」










栞のエネルギーは誰かを幸せにするためにあります。


これは始まりのお話ですが~本編 タロットカードと旅をする【怒りの女性】についてはまた後日書きたいと思います。


これからの旅をお楽しみに!

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