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第0話 4つの世界へ

ラブコメを書くのは初めてです。別の作品を主流で書いていますので不定期の更新となりますが、よろしくお願いします。

 僕の名前は有栖川優斗(ありすがわゆうと)

 私立聖林学園の生徒で先日二年生になったばかりなんだ。

 身長は170センチくらい、中肉中背、黒目黒髪で顔立ちもイケメンという程ではないけど、平均以上ではあると友人からは言われている。成績は上の下とそれなりに勉強はできると思っているし、家事も一人暮らしの中で頑張ってきたのでそこそこのレベルだと思う。

 唯一残念なのが、今まで一度も彼女が出来た経験が無い事。クラスメイトの女子とは用があれば多少話す程度で、親密な関係になったは女子は一人しか居ない。

 だからこそ、二年生になったら少しだけ積極的に動いてみようと思っていたんだ。


 ......でも、そんな僕に突然転機が訪れるなんて全く予想していなかったんだ。




 事の始まりは授業が終わって下校している途中に起こった。

 僕は夕食の準備をするために近所のスーパーマーケットに向かうことにしていた。

 いつもの歩道を何となく歩いていると、一人の女の子が偶然僕の目に映った。

 その女の子は僕と同じ聖林学園の制服を着ており、スカートの色が赤であることから二年生とだとすぐに分かった。

 彼女は歩きスマホをしながら横断歩道を渡ろうとしていたのだけど、道路向かい側の歩行者信号は赤の表示だった。しかし、スマホに集中している彼女はそれに気付かず横断歩道を渡り始めてしまった。

 そして、運悪く横断歩道へと車が接近してきたんだ。


(まずいっ!)


 僕は反射的に持っていた鞄を放り出すと、全力で横断歩道へと走る。


「危ない!!」


 僕の大声で女の子はようやく車が接近していることに気付いたみたいですが、その場に立ち尽くしたまま動かなくなりました。


(間に合えっ!)


 僕はアスファルトの地面を強く踏み込んで、跳び込むことで何とか女の子を突き飛ばす事に成功する。


 でも、その時にはすでに車が目の前に迫っていて・・・


 ・・・強い衝撃と大きな音を立てて僕の意識は暗転した。




『・・・優・・ん・・く・・さい』


 何処からか声が聞こえた気がする。


『有栖・優斗さ・目を・・して・・・い』


 誰かが僕を呼んでいる?


『有栖川優斗さん目を覚ましてください』


 僕は重たい瞼を開けると、そこは何もない正に真っ白な世界だった。


『良かった、目を覚まされたようですね』


 僕は声がする方向へ目を向けると、そこには神々しいといえる女性が佇んでいたんだ。


「そういえば・・・」


 ここで僕の記憶がようやく鮮明になってきた。


「そうだ、僕は女の子を助けようとして・・・」

『その通りです。貴方は車に轢かれました』

「つまり、ここはあの世?」

『正確には貴方の居た世界と死後の世界の狭間になります』

「つまり、僕は死んだのか・・・」


 あ〜あ、やってしまったな。女の子を助けるために自分が死んでは本末転倒だなと内心苦笑した。


『貴方には大変申し訳ない事をしてしまいました』


 なぜか女性は僕に頭を下げてきた。何故だ?


『自己紹介が遅れました。わたくしはアズマリアと言います。貴方が居た世界を管理する女神となります』


「え?神様、なのですか?」


 このシチュエーション、漫画や小説で見たことがある・・・


『これは夢でも幻でも無く、現実なのです』


 僕の心を読んだようにアズマリア様は答えます。女神様なのだから当然かもしれません。


『わたくしが謝罪した理由を説明しなければなりませんね。非常に言い辛い事ですが、貴方が助けようとした少女は車に轢かれたとしても奇跡的に軽傷ですむ予定でした』

「・・・えっと、つまり・・・」


 僕はその先に行き着く結論を打ち消そうとしたけど、アズマリア様が代弁するように呟く。


『貴方が助ける必要は何も無かった、という事です』

「えぇ・・・そんな・・・」


 僕はあまりのショックに目の前が真っ暗になりそうだった。まさか自分が無駄死にを体験することになるなんて・・・


『本来であれば間に合うタイミングでは無かったのですが、貴方が一時的に脳のリミットを外すという予定外の行動で不幸にも間に合ってしまったのです』


 はは、女神様ですら予想できなかった事をやってのけたのか。我ながら凄いなと何処か他人事ように思っていました。

 しかし、アズマリア様の言葉には続きがあったのです。


『これは状況を読み切れなかったわたくしの落ち度です。ですから、貴方には元の世界に戻っていただくようにしよう思っていました』


「え、そんな事可能なのですか?」


 僕は思わず聞き返してしまいました。これはもしや元の世界戻れるのではないか、と。


『わたくしは世界を管理する女神ですので、この程度の事はそれほど難しくありません。ですが・・・』


 アズマリア様が言い淀んでいる?僕は何か嫌な予感がしました。


『車に轢かれた衝撃で魂が四つに分かれてしまったのです』


 ・・・なるほど、意味が分からない。


『でしょうね。より正確に言うと、四つに魂が分かれてそれぞれ別の世界に飛ばされてしまったのです』

「えっと、そうなると一体何が起こるのですか?」

『貴方の意識が四つの世界を行き来することになります。幸い、一つは貴方が元居た世界、残り三つも元の世界の系列になるので生活に戸惑う事は無いでしょう』

「う〜んと、つまり僕は四つの世界で移り変わり暮らすという事になるのですか?」

『その認識で間違っていません。世界が切り替わるタイミングは貴方が就寝して日付が変わった時になります。いずれも貴方が元居た世界で交通事故に遭った次の日から始まります』

「という事は同じ日付を四回も過ごす事になるわけですか」

『そうなりますが、これは一時的な事になります』

「どういう事ですか?」

『分かれた四つの魂は元に戻ろうとする修復力が働きます。具体的には半年程で再び一つに戻るはずです。そうなれば一つの世界に定着します』

「なるほど。では、半年後に僕はどの世界で定着する事になるのですか?」


 すると、アズマリア様の返答は意外なものだった。


『・・・申し訳ありません。現時点ではわたくしにも分かりません』

「・・・それは何故ですか?」

『引き寄せるベースとなる魂は四つの中で最も輝きを増したものになります。しかし現時点で魂は綺麗に四等分されているので、どの世界の魂に引き寄せられるかが分からないのです』

「・・・つまり、半年後に最も輝いている魂を持つ世界へ定着する、ということですか」

『察しが良くて助かります。確かに現時点では分かりませんが、ポイントとなる要素はお教え出来ます』

「それは一体何ですか?」

『少女達です』

「は?」


 何の脈絡も無い返答に僕は呆然とした。


『ごめんなさい、少し説明不足でしたね。貴方が四つの世界で生活が始まると同時に、今後親密になっていく少女達が現れます。半年の間で彼女達と仲を深め、最終的に最も親密度が高くなった魂がベースとなります』

「そ、そういうことですか」


 今まで悲しい事に女の子と親密になった経験がほとんど無いから想像が出来ないけど、アズマリア様がおっしゃるのだから本当の事なんだろうなぁ。


『説明は以上ですが、何か聞いておきたい事はありますか?』


 僕は少し考えた後、気になったことがあるので聞いてみた。


「質問は二つあります。一つ目は半年後に魂が一つに戻った時、他の三つの世界では僕がどうなってしまうのですか?」

『なるほど、確かに気になる所でしょうね。この場合他の三つの世界では貴方という存在が無かったことになります。つまり、人々から貴方に関する記憶が全て無くなる事になります』

「では、僕の記憶も無くなるのですか?」

『いいえ、貴方の記憶は無くなりません。もし記憶を消して欲しいのであればわたくしが半年後にもう一度会うことになりますので、その時に消しましょう』


 今のところ記憶を消したいか分からないから、半年後の判断になりそうだ。


「分かりました。もう一つは四つの世界で親密になる少女達というのはどの世界も同じ人なのですか?」

『いいえ、四つの世界で出会う少女達は全て別人です。誰なのかは教えられませんので、貴方の目で確かめてください。きっとすぐに分かると思います』


 誰と親密になるかも気になっていたけど、先に釘を刺される形になってしまったようだ。流石に神様だけあって、僕の考えていることはお見通しというわけだ。


「分かりました、それは四つの世界へ行ったときの楽しみにしておきます」

『それが良いでしょう。・・・そろそろ時間ですね。貴方の人生が幸せに溢れることを願っていますよ』


 その言葉を最後に僕の意識は遠のいていく。


 こうして、四つの世界を股にかける生活が幕を開けるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

本作は基本的に優斗視点で話が進みますが、たまにヒロイン視点も入れるかもしれません。

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