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第九話 最終話(8)

        第2章プロローグ


 どう見ても一般人が立ち寄れない、アール・デコ風の重厚なホールに、二人の紳士が姿を見せた。

 そして、顔を合わせるや否や、会話が始まった。

「やっと北条の件が、片付いたようですな」

「はい。彼らが尽力してくれたお陰です」

「ただ、あなたの御息女の行方が、まだ分からないと聞かされました。さぞかしご心配でしょう」

「いえ、それも大丈夫です。崖下の木に鎖分銅があったという報告を受けました。ともあれ、どこかで生きているはずです」

「そうですか。……無事で良かった。しかし、娘さんもあなたに似て正義感が強いらしいですね」

「実に、無茶をするところがありまして、少々困っています」

「ただその正義感で、こちらに牙を向けてくることはないでしょうな?」

「この国の将来がかっているのですから、話せば分かってくれると確信しています」

「ふむっ。……ところで、実験の成果ですが、弱りましたな。研究者の話では安定しないそうで、あまり芳しくないとのことです」

「効果が強過ぎるのでしょうか?」

「そうかもしれませんね。所詮、我々が焦ったところでどうにもなりませんが……。委細を知る彼らに、引き続き任せるしかないでしょう」

「まだまだ時間が必要だという訳ですね」

「だが、何としてもこのイースト・ナイン計画は成功させねばなりません。我々の未来のために、全てを投げ打ってでもやり遂げないと……」


 これで一旦、男たちの会話は終わった。そして勿論、この場にいたのは八咫神総監と、もう一人は行政に係わる国の要人であった。彼らは、日本国の未来に訪れるであろう、深刻な問題に頭を悩ませ、その解決策について話し合っていたのだ。とはいえ、やはり容易ならざる事案のため、そう上手くはいかず、難航を余儀なくされていた。

 それに……ここに来て、近々に差し迫った、より深刻な問題も発生したと思われる。というのも、何やら不穏な――事によっては、国家を揺るがす大事件に成り得る――動きが散見され始めたからだ。とはいえ、確かな証拠がない限り議題にできないため、二人の紳士は敢えてその話を持ち出さなかった。

 後は、沈黙を通すのみ。

 すると途端に、静けさがホール全体を包み込み、無音が雑音となって喧しく聞こえてきた。まるで、この伽藍とした大広間では時間が止まり、その優美な造形の鮮やかさを恒久的に保つかのように……

 だが、無論それは幻想に過ぎず、時は着実に進んでくるもの。

 恰も参事の瞬間へと誘うかのごとく、足早に過ぎていくのであった!――――



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