第九話 最終話(5)
3 予期せぬ終焉
レディは、北条を睨んで問い質した。
「何の話だ?」と。
そうすると、奴は続けた。
「……知らんのか? 国の存亡がかかった極秘計画を遂行するのに、『HY9』の人体実験をすることは了承済みとはいえ、わしのやり方では気に入らんのだろう? それで邪魔になったわしを、お前は親父の命令で始末しに来たんだろうが?」と。
「何? 極秘計画……『HY9』の人体実験を了承……」
まさしく、寝耳に水、信じられない話を聞かされたのだ! よもや、父までもヒトゲノム計画に絡んでいたなんて……。レディは、ショックで頭が真っ白になった。
唯々、呆然と佇む。
一方、そんな中、北条は彼女の態度を目にして察したよう。「へへへへ……本当に知らんようだな。知らんでわしのところへ? これはお笑い種だわ。わっははははっ」と笑い出した。まるでレディの心情を逆なでするかのように。
だが、反論する気概も起こらなかった。
(もう、悪党など構っていられない)
それより……疑心暗鬼になったことで、さらなる疑念も脳裏に湧き出てきたか? (もしかすると、もっと身近な者の中に関与した人物がいるかもしれない)と。
ならば、確かめずにはいられよかッ!
「工藤のおっさん! よもやあんたも、一枚噛んでいたんじゃないだろうな?」と思わず訊いていた。父親の直下に属する刑事までも怪しいと睨んだのだ。
けれど、「バカ言え、俺みたいな平が重要事項に関係している訳ねえだろうがぁ」と、予想に反して彼の返答は否定するものだった。
(どうやら、考え過ぎか?……)レディは、一先ず納得する。その答えがもっともらしく聞こえたためだ。
ただしそうなると、真相もはっきりしない訳だが……
(結局、証拠がない以上、奴の世迷い言か?)
……と安心しかけたところ、工藤の話にはまだ続きがあったみたいで、
「まあ、しょうがねえ、ここは正直に教えといてやる。噂では耳にしたさ。国家プロジェクトが秘密裏に動いているってことをな!」と伏せ目がちに言った?
何と、北条の話を裏付けるようなことを暴露したのだ!
――やはり、父親の方は何かしら加担していたようだ!――レディは、断腸の思いでそう結論付けた。
しかし……そんな話を、すんなりと受け入れられるはずもなく、「あの父が、何故だァー?」と叫びながら、心の中で必死に間違いであってほしいと切望するのであった!
ところが、その直後、突然異変が起こった。
後ろの隅で、騒がしい声が聞こえてきたのだ。
「ひゃひゃひゃー、死ね! みんな死ねぇー」




