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第九話 最終話(2)

  ―― ―― ―― ―― ――


「それで、皇虎おおこの容態はどうなのでしょうか?」とおクウの、次なる質問を耳にした。

「ああ、奴はどうにか生きてはいるさ。だがな、内臓破裂と背骨が折れて、もう二度と立ち上がれないらしい。一生病院でベッド暮らしだ。まあ、薬の効果で、体は使いもんにならないが、脳だけは正常だ。何もできない不自由な体で一生を送るしかねえな。ある意味、地獄のような毎日だろうよ。それも自業自得と言うやつだがな。人を殺めて、その罪が自分に返ってくるという当然の摂理だ」と工藤は答えた。

「では、アラブの人々はどのように対処されたのでしょう?」

「彼らは丁重に帰ってもらったよ。無論、薬とデータは没収したがね。武器輸出三原則に違反してる訳だからな」

「後は、北条の居場所だけですね」

「お前たちにもいろいろ当たらせたが、結局どこにいるのやら見当もつかねえ。植松の野郎も、おかしなことに千葉の海神岬へ取材に行ったきり連絡もないらしい」

 するとここで、おクウは思い出したかのように訊いてきた。

「植松と言えば、工藤さん。あなたの処分は決まったのですか?」と。

「化け物について話した件でのおとがめか? いいや、まだだ。野郎が雑誌に公開してねえし、まあ、公開してたら今頃大変な騒ぎになってたろうが……。とにかく、上の方でも俺への罰則を迷ってんじゃねえか? 気楽に待つとするさ」と工藤は、事も無げに答えた。《どうやらあの事件に関して、何故・・か、全く表立った動きがないようだ》

 ところが、その後、唐突に電話のベルが鳴った。

 工藤が慌てて受話器を取る。続いて、

「はい。おう、分かった。繋いでくれ」と言って交換手に指示を出した。外線からの電話だ。一旦、本部で受けた後に内線へと回すシステムだった。

「おう、お前か? それで……本当かよ!」そして、意外な情報を得たのだった。よって彼は、「……でかした。……この借りはいつか返すぜ」と言って勇んで電話を切ったなら、速やかにおクウたちにも伝えた。「新しいタレコミがあったぞ。北条らしき男が蓼科にいるという話だ。どうやら奴の隠れ別荘があるのかもしれねえな。俺の同期が、偶然似た男を見つけたみたいで連絡してくれたぜ」と。つまり、彼らの苦労も漸く実を結んだという訳だ。

「では、ただちに出動ですねぇ!」するとおクウの、やる気に満ちた声が聞こえてきた。

「ああ、そういうことだ……。待ってろよ、北条! とっ捕まえてやる」そして工藤も、それに応えて同様に意気込んだことは言うまでもない。

 彼らは、急いで現地へ乗り込む支度に取り掛かるのであった。



―― ―― ―― ―― ――


 レディはバイクに跨り、フルフェイスのヘルメットを被ったなら、焦点を北条の屋敷に合わせた。――とうとう、最後の捕り物劇が始まろうとしていたのだ!――。そして勿論、後方ではいつでも発進できる態勢で数台のパトカーも待機していた。

 要は準備万端、全て整ったという訳だ。

 よって彼女は、エンジンを全開にして突っ走った!

 ターゲットである伏魔殿・・・を目指して激走する。

 ただしここで、問題も生じた? 強固な鉄の門がある限り中へ入れない。

……が、それも計算尽くか。巨大な鉄扉を目にした瞬間、容赦なく投げた! 赤のシューターを……

――忽ち、大爆発音が轟く!――何と、手榴弾型円盤で、鉄の扉を爆破したのだ!

 途端に、黒煙が数十メートルも噴き上がり、炎が四方に荒れ狂った。その場はまるで地獄の門と化する。

 そして、その中を……(火炎で満たされた渦中であろうとも、物ともしない!)突っ切った! 崩れた扉を踏み台にしたなら、ジャンプ一番、宙に舞い上がったのだ。それはまるで、聳え立つ巨大な煙の柱から、突如黒いペガサスが爆音のごときいななきを発しながら空を駆け抜けているかのように。

 これで何とか、屋敷内へは入り込めたぞ!

 とはいえ……これからが勝負か? どれほど戦慄的な登場で戦意を奪おうとしても、(一時は肝を冷やしたかもしれないが)荒くれどもはなかなか白旗を上げようとせず、一斉にマシンガンを向けて、彼女の操るバイクを狙い撃ちしてきたのだから。

 だが、それも想定内だ。当のレディが、大人しくバイクに乗車しているはずもなく、既に遥か上空へ飛び上がり、伸身の仰向けの状態で、反撃の狼煙を上げていた。

――唸る投擲音!――瞬く間に、その強肩からシューターを投げ出していたのだ! 

「うわー!」「ぎゃーゃー」ただちに、男たちの呻く声が聞こえてきた。奴らの腕を見事に叩き折ったよう。後は、悠々と膝をついて地面に着地する。これで第一の関門を突破したという訳だ。




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