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第九話 最終話(1)

      1 決着


 都心から離れた保養地に、突如として足音が響く。早くも日没が近づく中、全く人通りがない道を、三人の武者が纏わりつくように足元から伸びた長い影を従えて歩いていた。

 目指すのは、この先の突き当りに陣取る豪邸。ただしその建物は、広大であることに間違いないのだが、近づくに連れて少し異質な佇まいであることが見て取れた。要塞のように周りが強固なコンクリート壁で囲まれ、入り口の門は、大きな観音開きの鉄の扉で強化されていた。しかも、屋敷の裏手は切りだった崖で、数十メートル下には川も流れていた。つまり、恰も崖っぷちに建てられた難攻不落の城、攻めるには容易でない場所であった。そしてそんな要塞・・へ、武者たちは勇猛果敢に歩を進めていたのだ!


「もう、よろしいのですか?」すると突然、右隣の兵が声をかけてきた。

「まあな、戦うのに何の支障もない」  

「…………」続いて左隣の兵は、言葉を発しようとはせず、笑顔だけでその声に応じた。

 そう、言わずもがな、その三人の武者とは機捜隊の三羽烏、レディMとおクウ、セブンの面々だった。

 続いて、後方より工藤も現れたか?

「おい、ちょっと時間をくれ」彼は登場するなりレディたちを引き止めた。どうやら、一緒に連れてきた見知らぬ娘のことを紹介するつもりのようだ。「聞いてくれ。今朝新しいメンバーが訓練から戻ってきた。こいつなんだが、簡単に紹介するぜ。名前はアルファ。今日が初仕事だ」とその娘を指して言った。

 すると、娘の方が自ら進んで自己紹介を始めた。

「私の名前は、壱菜いちな・オルぺロスと言います。先輩方、どうぞよろしくお願いします」とレディの顔をじっと覗き込んで言ったという――どうやら、レディのことが気になる様子だ――

 ただ、その理由もすぐに知れたか? その後、「はじめましてM。私はあなたにあこがれて、機捜隊に入ったんです。一緒に戦えて本当に嬉しいです」と話したからだ。

 一方、レディも、この娘に少々興味が湧いた。そのグリーンの瞳を前にして、

「あんた、ハーフなのね」と訊いていた。

「はい。父がギリシャ人で母が日本人の関西育ちです」

「そうなの。それで今日が始めてなのね。だったら最初は私たちの後方をサポートしてちょうだい」それから珍しく、レディは指示を出した。ただし、その物腰と喋り口調が、今までと違う感じになっていたが……

 すると、側で聞いていた工藤がそのことに気づいたみたいで、

「お前、変に女ぽくなってねえか?」と言ってきた。

 だが、その言葉は彼女にとって禁句だったため、

「何を言ってやがる、このたこオヤジ! とち狂ってんじゃねえぞッ」とえらい剣幕で叱責してしまう。思わず地が出た格好になった。

 これには、流石に彼も呆れ気味か? そのため結局は、

「いいや、違うねぇー。俺の間違いだったよ。お前は根っからの荒くれだ!」と弱り顔を見せて、すぐに打ち消した。まあ、要らぬことを言わないほうがいいという教訓でもあった訳だ。

「ふふふふっ……」そして、そんなやり取りが終わったところで、おクウの方はいつものことだと思ったのだろう、笑みを洩らしていた。

 それからセブンも、「…………」相変わらずただ黙って見守っているだけのよう。まさしく、天使を思わせる様相で……


「よーし、出撃だ! 注意してかかれ」

 ところが、その後、場の雰囲気が変わった。工藤の号令が発せられ、周囲に緊張感が走ったのだ。

 というのも、実は、目の前の豪邸は北条の別宅で、今まさに――奴がここに潜伏しているという情報を基に、大勢の警官たちも引き連れて――強行突破を仕掛けようとしていたからだ。

 ただし……ここまで漕ぎ着けるのに、かなりの時間と労力を費やした。

 入院しているレディを除き、他のメンバーたちが休まず北条の行方を調査していたのだが、なかなか足取りが掴めず、お手上げ状態だった。[海外への逃亡も考えられるため、空港や海路のチェクは怠らず、陸路でも主要な場所は検問さえも実施していた]

 だが、そんな中、突然ひょんなところから朗報がもたらされたのだ。

 それはちょうど二日前の、機捜隊UPたちが捜索方法を再度検討すべく本部に戻っていた時のこと。



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